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-ガク-路地にて⑨
翼と過ごした土曜日が終わり、日曜日は単発のバイトで一日稼ぎ、そして新しい週が始まった。
いよいよ今週末だ。
あと一週間過ぎれば、イオリに会える。
イオリとのファーストキスはどこでしようかな。
せっかくだから、とびっきりのシチュエーションでしたい。
ガクは、イオリより自分の方がよっぽどロマンチストだなと自嘲しながら、都内のデートスポットを検索してはブックマークをつけていった。
てか、もうすぐ夏休みじゃん。
どうしよっかなあ、一年の時はリゾートバイトに応募して、一ヶ月くらい住み込みで働いたけど……
今年はイオリと会いたいから、住み込み系はナシだな。
お金がある同級生は、長い休みを使って語学留学をしたりしている。
俺も海外には憧れるけど、とてもそんな余裕はない。
悠真はその語学留学に行くから、夏はずっと日本に居ないらしい。
カナダには語学学校が沢山あるそうで、そしてどの学校にも夏は日本人が溢れかえっているんだとか。
カナダに行って、日本人の友達を沢山作って帰ってくるのがデフォだと言っていたけれど、それって留学の意味あるのか。
翔太は、去年一緒に行ったリゾートバイトに今年も応募したと聞いた。
そこの旅館の娘さんが可愛かったから、それをモチベにして働くとも言っていた。
確かに可愛かったけれど、それをモチベーションにできるのは素直に尊敬する。
駿は彼女さんと半同棲してるから、日がなダラダラ過ごすつもりだと言ってたな。
バイトない日は遊ぼうぜ、って言ってくれたけど、彼女さんに申し訳なくてこっちからは誘いにくい……。
他にもクラスメイトやサークルの仲間、バイト先、地元など友人は多い方のガクだが、
いつも周りから遊びに誘ってくれるため、自分から声をかけることはあまりなかった。
今年も遊びよりバイト中心の夏休みになりそうだな、と思いつつ、
イオリとの予定がなるべく合うよう、びっしりとシフトを入れすぎないようにもしなければ、と思いながら、ガクはスマホを閉じた。
——とそこに、一通のメッセージが入って来た。
『ガクさん。やっぱり週末じゃなくて、今日会えませんか』
『いいよ!バイトもないし、授業終わったら会える』
ガクは即返信した。
すると一分ほどしてイオリからまたメッセージが届く。
『すみません、清澄白河で良いですか?
出口で待ってるので』
『おけ』
イオリはその日の夕方、授業が終わると同時に電車に飛び乗った。
今は家庭教師のバイトで貯まったお金もあるため、調布駅から清澄白河駅までの500円程度を払う勇気もあった。
それにしても、お互いの大学がある上野でも調布でもなければ、その中間地点でもない清澄白河……
イオリはなんでそんな場所を選んだんだろう?
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