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-ガク-音楽一家⑧
「んん……ッ!」
イオリから、一際艶かしい声が漏れる。
「ガクさん……。
舐めてるんですか、そんなとこ……?」
「うん」
ガクは短く返事をすると、痣の周囲にも舌を這わせた。
「あ!——」
「イオリ。痣の周りも舐めさせて」
「……は、い……」
ガクは返答を聞くやいなや、脇腹や、へその中にも舌を差し込んだ。
「ああッ!……や……」
「ここは嫌?」
「……や、じゃない……です」
一つ一つ、丁寧に確かめながら。
確かめながらも、ガクは止まれなかった。
イオリの腹部全体に唇と舌が触れた頃、ガクは異変を感じて顔を上げた。
「……ふ、……ぅ……」
「……泣いてる……?」
ガクは、イオリが顔を覆って僅かに震えているのを見て、慌てて身体から離れた。
「ごめっ……!触り過ぎた——」
「ちが……」
イオリは顔に当てていた両手を離すと、潤んだ瞳でガクを見上げた。
「ここに優しく触れられたことなんて無かった……
いつも殴られたり、引っ掻かれたり、蹴られたりして——痛い思いしかしたことがなかった。
でも……ガクさんのは、すごく優しい……
柔らかくて、温かくて、安心する……」
イオリはそう言って、そっと視線を逸らした。
「それに……気持ち良い……と思ってしまいました……」
「……!」
「変ですよね……」
「変じゃない。変じゃないよ」
ガクはイオリの腹に自分の頭を乗せ、囁くように言った。
「気持ち良いのは、変なことでも悪いことでもないんだよ。
俺も今、イオリと触れ合ってるとこ——安心するし、気持ち良い」
「……そうなんですね……」
「イオリ。今日さ、泊まって行ってもいい?」
「……」
「始発で帰る。ご両親とは顔を合わせないようにするから。
それに、イオリが心の準備が必要な場所には触れたりもしないからさ——
イオリと一緒に寝たい」
ガクが縋るように言うと、イオリは小さく笑みを浮かべた。
「……そうですね。
こんな機会、もうあるか分からないので——
朝まで一緒にいてください」
「マジ?やったあ」
「ただ——僕たち、ちゃんと付き合い始めてから会うのは初めてなのに、こんなことしちゃって良かったんでしょうか」
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