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-ガク-夏の逃避行⑰

ガクがそう言い切ると、イオリの視線がガクに向いた。 「——それ、本当ですか?」 「うん」 「信じて良いんですよね?」 「うん」 「……じゃあ」 イオリは少し躊躇いがちに視線を落とした。 「帰ったら、ぎゅってしてください……。 それからキスもして欲しいです。 ……それで、寝る時は同じベッドで寝てくれますか……」 「……喜んで。というか——」 ガクはその場でイオリを抱き締めた。 「今ここで抱き締めたいくらい」 「もうしてるじゃないですか……」 ガクの胸の中でぎゅっと抱き締められ、イオリは動揺する素振りを見せたが、やがて大人しくなった。 「……キスも、ここでしちゃう?」 ガクが耳元で囁くと、イオリはきょろきょろと辺りを見渡した。 「だ……誰も見ていないですか……?」 「見てない、見てない」 「見渡しもせずに断言できます?」 「イオリが恥ずかしいなら、家まで我慢だね」 「……今なら、誰も歩いてません……」 ガクはイオリの両頬を手のひらで包み込むと、唇を重ねた。 すぐにその唇は離れ、イオリは恍惚を浮かべていた顔をハッと真顔に戻す。 「——帰りましょう」 「おう」 家に戻ってきた二人は抱き締め合うと、ベッドに並んで座った。 「舌……入れてもいい?」 キスをしながら、ガクが問いかけると、イオリは若干顔を強張らせながらも、こくりと頷いた。 「いい、けれど——僕、どうしたらいいかわからない」 「何もしなくていいよ。 俺を中に迎えてくれたら、あとは何もしなくていい」 イオリが唇の上下を軽く開くと、ガクはその隙間から舌を優しく捩じ込んだ。 小さな水音が部屋に響く。 「ん……」 イオリから小さく喘ぐような声が漏れる。 イオリは暫くガクの舌が内側をなぞっているのを感じていたが、次第に自分もその舌に絡めるように口付けを深めて行った。 ——気持ち良いな。 ガクは目を開き、夢中で舌を絡ませるイオリの瞼を見つめながら感じた。 イオリが好きだ。 好きだから、どんな形で触れ合っていても幸せになれる。 今のこの瞬間だって、とてつもなく幸せだけど—— やっぱり、イオリと最後までしてみたい。 駿のように、自分の体力と快感の限界に迫ろうとか、そんなゲーム感覚は全く持ってない。 イオリと繋がりあって、もっともっとイオリのことを知っていきたい。 ——今度の旅行。 星空が綺麗な町で、古いけれど雰囲気の良さそうな温泉旅館に泊まるプランに申し込んだ。 何かが起こって欲しい、起こしたいって期待はしている。 でももしイオリの心の準備ができなければ、その時はただ旅行を楽しめばいいとも思ってる。 イオリとの思い出が欲しい。 一生忘れられないくらいの思い出を作りたい——イオリにとっての。

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