99 / 200
-ガク-星空のまち⑤
「……期待してくれてんの?」
ガクが探るように訊ねる。
とことん慎重になっているのは重々承知しながらも。
イオリの気持ちを無視した行動を取りたくなかった。
「……してる……」
イオリが、掛け布団を口元まで被りながら答える。
「——そっちの布団、入っていい?」
ガクの問いかけに、こくりと頷くイオリ。
緊張がこちらにまで伝播しそうになる。
ガクは自然と早くなる鼓動を感じながら、イオリの掛け布団を捲った。
イオリに覆い被さるように重なると、耳元でイオリが息を呑む音が聞こえてくる。
「……初めて、なんだよな」
「はい。女性も、男性も……」
「俺、挿れる側しか分からないけど——いい?」
「僕はどちらも分からない。ガクに決めて欲しいです」
「じゃあ……、多分痛い思いさせちゃうと思うけど……辛くなったら言って」
イオリの頭が縦に動くのを確かめ、ガクはイオリの浴衣に手を掛けた。
暗がりの中、ぼんやりと白い肌が浮かび上がってくる。
「——恥ずかしい……」
イオリが両手で顔を覆うようにして言うと、ガクは解いた帯を抜き取りながら言った。
「これからもっと恥ずかしいことするよ」
自分の帯にも手を掛ける。
浴衣を畳の方へ投げ、ボクサーパンツも降ろしていくと、イオリは目のやり場に困るように顔を横に向けた。
「……怖い」
小さく漏らすイオリの上に、ガクは折り重なる。
衣一つ隔てていない肌から、イオリの体温が伝わってくる。
「——俺も怖いよ」
少しして、ガクが言う。
男性の身体を初めて抱く緊張感も。
それから、イオリに怖い思いや、痛い思いをなるべくさせずにできるかという不安も籠った言葉。
日頃から両親に体罰を受けているイオリを、嫌な気持ちにさせず抱くことができるか、正直全く自信が無かった。
「怖いけど——でも、イオリのことが好きだって気持ち、言葉以外でも伝わるように頑張るから」
「……ガク……」
「イオリのこと、もっと教えて」
「……僕もガクを知りたい。教えてください——」
ガクはイオリに唇を押し当てた。
数秒後には、当たり前のように舌を絡め、イオリの吐息が小刻みに震える。
緊張と期待が押し寄せているような、そんな乱れた呼吸。
ガクは自分の下半身が熱く膨らむのを体感した。
ぴったり重なり合ったイオリの肌の上で、行き場をなくしたそれが苦しくなる。
これまでベッドの隣で寝ている時にもそんな風になることが何度もあったが、イオリに悟られないよう密かに処理してきた。
今夜は、この膨らみも隠す必要はない。
ガクは唇を離すと、イオリの首筋に舌を這わせる。
イオリの身体がゾクゾクと震えているのが、皮膚を通して伝わってくる。
怖がっているのか、それとも感じてくれているのかが分からない。
「……怖かったり、痛かったりしたら、言ってね」
そう囁くと、イオリがこくこくと頷いてみせた。
ガクは鎖骨を通って胸の方まで降りてくると、少し躊躇った後、頂を舌で撫でた。
ともだちにシェアしよう!

