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-ガク-星空のまち⑥

「ッあ——!」 イオリから声が漏れる。 ガクが緩急をつけてくすぐるように撫でると、その度にイオリから小さな悲鳴のような声が聞こえた。 それだけで、もうずっとそうしていようかとも思うガクだったが、その舌をさらに下へと伸ばしていった。 ガクの舌の上に、ざらりとした感触が伝わる。 かさぶたや、みみず腫れ、痣に覆われた腹部。 ガクは薄暗い中でも障子から差し込む僅かな明かりを頼りに、その傷跡すべてをなぞるようにして舌を這わせた。 ちょうど動物の母親が、子どもの傷を舐めて治すときのように。 「んん——」 イオリから堪えるような声が漏れ出る。 傷に触れるたび、びくっと身体をよがらせるも、ガクを拒絶するような動きではなかった。 前世でつけた痕の上にも舌を乗せる。 するとイオリから、一際艶めかしい声が聞こえてきた。 「あ……ッ」 恥ずかしそうな、でも満ち足りているような、湿度を感じる声。 それが喘ぐ声だと理解できたガクは、痕の上を何度もなぞった。 「ぁ……ぅ、んん……」 イオリから耐えず漏れる声に、たまらない愛おしさが溢れたガクは、一度そこから唇を離すと、またイオリの唇を塞いだ。 「好きだ。好きだイオリ——」 唇の隙間から想いを伝えると、イオリの唇も動く。 「好き……です、ガク——」 「……ん」 ガクは唇を離し、イオリの顔を間近に覗き込んだ。 柔らかく、ほんのりウェーブした髪が、汗で額に張り付いている。 頬を紅潮させ、瞼をゆっくりと瞬かせるイオリの顔は、いつも以上に綺麗だと感じた。 これからこの顔を、痛みで歪ませてしまうかもしれないと思うと、 申し訳なさと同時に、本能的な興奮を覚えてしまう自分がいた。 挿れる前に、身体の内側をしっかり解さなければいけないことは、スマホでこっそり調べていた。 スマホで見た情報の記憶を頼りに、イオリの中に指を差し込んでいく。 イオリの身体がひくりと跳ね、ガクは 「ごめ——痛かった?」 と咄嗟に訊ねた。 「……続けて、くださ……ぃ」 イオリが余裕のない声で答える。 「イオリに痛い思いはさせたくないけど、慣れるまでは痛くしちゃうかもしれない。 ——でもこの初めてが、イオリにとって辛いだけの思い出にならないようにしたい」 ガクは慎重に時間をかけて、イオリの中へ触れた。 イオリが痛そうに顔を歪ませると、自分にも痛みが伝わってくる。 反対に、気持ちよさそうな表情を見せると、ガクにもその快楽が伝わってくるようだった。

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