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-ガク-星空のまち⑦
「——挿れるよ」
充分に時間をかけたあと、イオリの脚を広げ、はち切れそうになっている場所を押し込んでいく。
中は狭く、とても自分のものが入り込む隙間があるようには思えなかったが、
イオリが身体の強張りを解すように深呼吸を繰り返し、力を抜いていくと、
それに合わせて少しずつ奥の方を侵食していった。
イオリがそこにだけ痛みを感じないよう、ガクは時折イオリの胸や腹を撫で、痛みから集中を逸らしてやる。
その隙にどんどん奥へ奥へと入り込み、とうとう半分くらいまで挿入できたところで、ガクはゆっくり動き始めた。
「あっ——」
イオリが、苦痛と快楽の区別がつかない声を上げた。
「平気?」
「……平気です」
「——イオリ」
ガクはイオリのお腹をそっと撫でると、
「今だけ、敬語やめてみて」
と告げた。
「……敬語じゃない方が、良いですか……?」
「うん、まだどこか遠慮がちに聞こえちゃうから——
俺のこと『ガク』って呼んでくれたみたいに、言葉遣いでも距離が縮まっていったら嬉しい」
「……わかっ……た」
イオリが頷くと、再びガクは動き始めた。
「あ……!」
イオリから声が漏れる。
「痛い?」
「ん……。痛い、けど……嫌じゃない……」
ガクが腰の動きを弱めると、
「もっと強くても、平気……」
と、イオリはガクの腕にしがみついて言った。
「あッ……あぁ……」
ガクがさらに奥の方へ身体を捩じ込み、速度を上げると、イオリが声を上げた。
「んっ、んん——。
……気持ち良い……かも……」
「本当?」
「ん……。ガク……。
ガクと今、繋がってるんだね……」
「そうだよ。今俺、イオリの中に入ってる」
「……嬉しい……」
「俺も嬉しい。すっごい嬉しい」
「——あッ」
ガクの動きが強くなり、イオリが出す声も段々と激しさを増していく。
「もっと——速くして、いい?」
「いい……、続けて……」
「ん——」
「あ……っ!」
どちらもおかしくなりそうなくらい、呼吸が乱れている。
酸欠になるんじゃないかと思うくらいに、呼吸すらも余裕がなくなっていく。
そして脳が痺れるくらいの快楽。
「好き……、ガク。好き——」
「俺も……好き、イオリ——」
「好き——ああッ!」
イオリに『好き』と言われるたび、信じられないほど興奮し、すぐにでも果ててしまいそうになる。
けれどもこの瞬間が終わってほしくなくて、堪えながらイオリの中で動き続ける。
夏が終わったら、どうなるだろう。
二人の関係は、二人の暮らしは、変わってしまうだろうか。
この気持ちがずっと先も続いて、イオリも同じように思ってくれて、そして——
俺たちのことを、イオリの家族が受け入れてくれたら、そんな未来が約束されるだろうか。
……そんな未来は、本当に来るのか?
夏が終わったら、この幸せな時間も終わってしまうような気がして、怖い。
だけど俺は、きっとこれから先も、こんな風に
イオリのことで頭をいっぱいにして生きていくんだと思う。
「イオリ——中に出してもいい?」
律人が弓弦に痕をつけたように。
目に見えなくても、イオリの中に自分の痕跡を残したくて。
「いいよ——来て」
イオリの返事を聞くと同時に、ガクは耐えていたものすべてを中へ注ぎ込んだ。
布団の上に汗ばんだ身体を預けると、隣からイオリの呼吸が聞こえてくる。
「はぁ……は……っ」
「ごめん、激しく動き過ぎたかな……」
「は……、大丈夫……」
イオリはそう言うと、自らガクの横顔に頬を寄せてきた。
「ありがと、ガク……」
イオリがガクの頬にキスする。
その仕草があまりに可愛らしくて、ガクは果てたばかりの身体がまた昂ってくるのを感じた。
「イオリ——」
ガクは離れて行こうとするイオリの頬に手を添え、唇を捕まえた。
「んっ……」
「ありがとう。すごい幸せ」
「……僕も」
ガクはイオリを腕枕すると、イオリの髪を撫でた。
イオリは安心したような表情で眠りに落ち、それを見つめていたガクもやがて意識を手放した。
——二人にとっての幸せな夜が、これで最後になることを知っていたなら、朝までイオリの頭を撫で続けていただろう。
後にガクはそう振り返ることになる。
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