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-ガク-旧友の結婚③

翼は寂しそうに微笑むと、アルコールで少し頬を赤く染めているガクの目を覗き込んだ。 「さっき、悠真先輩たちはガク先生を独り身だと言っていましたけど……。 実際のところ先生はフリーなんですか? それとも——『大事にしたい人』と、今もお付き合いしてるんですか?」 「フリーだよ。でも、『大事にしたい人』はあの頃から変わってない。 大学二年の時から、ずっと」 ガクが迷うことなく答えると、翼は「はぁ……」と深いため息をついた。 「そっかあぁ〜。一途なんだね、ガク先生」 「翼さんは見たかった?大事にしたい人」 ガクが翼に質問で返すと、翼はニッとした笑みを浮かべた。 「彼氏、いますよ。 ガク先生ほどイケメンじゃないけれど—— でもとっても優しくて、私のことを一番に考えてくれる、そんな彼氏です」 翼の言葉を聞き、ガクは心からの「良かった」を口にした。 「ガク先生は……、大事な人とは、今どんな関係なんですか? 付き合ってはいないんですか?」 「付き合ってはない……よ。 でも、付き合えるように努力したいし、ずっと添い遂げたいとも思ってる」 「わ、ロマンチックですね。 じゃあ将来は結婚も考えてるんだ」 結婚—— その言葉が重くのしかかる。 男同士では結婚はできない。 地域によってはパートナーシップ制度というものがあるのは調べたことがあるけれど、婚姻関係を結ぶのと同じものではない。 現時点の制度としては法的効力はないため、相続や税制といった権利は得られないそうだ。 それでも一つの区切りとして制度に申し込むカップル達がいるのも分かるし、自分もできることなら、「家族」の証になるようなものが欲しい。 でも、それより先に必要なのは、イオリの離婚が成立すること。 イオリの両親をどうにか説得しなければ、そして俺との交際を認めてもらえなければ パートナーとして堂々と一緒になることは難しい。 大学時代みたいに、隠れて付き合うようなことはしなくても良いかもしれないけど、 長く一緒に居ることを見据えるなら、わだかまりは解消できるに越したことはない。 法的な権利が与えられないなら尚のこと、周囲にサポートしてもらえる環境であるほうが、イオリにも苦労をかけないだろうと思う。 まあ、俺はイオリの両親には憎まれてすらいるから、簡単なことじゃないだろうけど—— 『ではここで、新婦・真由美様のご友人一同から、サプライズで歌のプレゼントです』 ガクがこの先のことを考え込んでいると、フロア内にアナウンスの声が響いた。 「真由美〜、結婚おめでとー!!」 女性達が、明るく声を揃えて言う。 「今日は、真由美の新たな門出を祝って、真由美が大好きな『ストームボーイズ』の曲を贈りまーす!」 代表の女性がマイク越しにそう言った後、伴奏の音が流れ、女性達が一斉に歌い出した。

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