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-ガク-旧友の結婚④

新婦は、友人達が歌うのを楽しそうに見つめていたが、やがてぽろぽろと涙をこぼし始めた。 曲を歌い終わった友人達は、わらわらと彼女の元に集まっていく。 他のテーブルで鑑賞していた参加者達も、何事かと新婦を見ると、新婦はマイクを持ち、こう言った。 「みん、な……あり……がと……。 嬉しくて……っ、涙が出てきちゃった……。 やだ、こんなに泣いたらメイク崩れちゃう……。 でも、本当……私と駿くんの結婚を祝ってくれてる人たちがこんなに沢山いるんだなあって……。 それを実感したら、嬉しくって……うぅ……っ」 新婦が泣き出したのを見て、友人達からも啜り泣く声が漏れる。 新婦の両親も、瞳に涙を浮かべながら幸せそうな表情で見守っている。 「真由美ぃ!うちら一生仲良しでいようね!」 「旦那さんと、ずっと仲良くね!」 友人たちと抱き合いながら涙ぐむ新婦を見て、ガクは温かい気持ちを抱くと同時に、少し胸が苦しくもなった。 こんな風に、家族や友人が心から祝ってくれる結婚式ができたら、本当に幸せだと思う。 俺とイオリは、そもそも籍を入れることができないのに、いつか結婚式をやれるだろうか? 形として式だけは執り行ったとして、家族や友人はそれをどう受け止めるだろうか。 男同士なんて理解できない—— そう思われそうだな。 そんな風に冷静に考える一方、それでも皆から認められ、祝福されるような交際がしたいという願望も強くなっていく。 「ふぃ〜、外の空気吸ったら、ちょっと酔いが醒めたわー」 その時、外の喫煙所へ行っていた悠真と翔太がテーブルに戻ってきた。 「ガク、さっきはごめんなー。 冷静に考えたら——てか考えなくても、俺らサイテーだったわ」 「言い訳させてもらうとさ、俺最近彼女と別れたばっかりで。 駿の幸せを素直に祝えなくて、奥さんをディスるような八つ当たりの仕方をしちゃって、ほんと反省してる」 口々に謝ってくる二人に、ガクはふと心に浮かんだままに声を発した。 「悠真、翔太、翼さん。 俺がもし——男同士で結婚式を挙げたら、みんなは祝ってくれる?」 三人の間に沈黙が広がる。 ——失敗したな、これ。 ガクはなんともいえない気まずさを覚え、次に「なーんてな」と冗談で濁すことを考え始めた。 その刹那、翼がはっきりとした声で言った。 「祝います!めちゃくちゃ祝いますよ!! ——大切なガク先生と、ガク先生が大切にしてる人の結婚式に呼んで頂けるなんて、これほど嬉しいことはありませんから!」 続いて、悠真と翔太もそれぞれに口を開く。 「あーね。ガクがずっと彼女作らなかった理由ってそゆこと。 ——俺は好き同士なら、男同士でも女同士でも貫き通せばって思う。 語学留学で海外行ってた時なんて、同性カップルが当たり前のように人前でいちゃついてたしな。 ガクも当たり前に式挙げればいいんじゃねえの?俺らご祝儀弾むし」 「今更だけどさ、昔、学部棟でガクがメッセージのやり取りに一喜一憂してたことあったじゃん。 俺ら相手の名前を見て、絶対女だろって決めつけてたけど、ガクは男だって言い続けてたよな。 もしかしてガクって、今もその人と交流あんの? ええとなんだっけ、『伊織』……って表示名だったっけ。 ——まーいいや。 俺も式するなら絶対参加するし、仲間集めてフラッシュモブとかもやっちゃうよ?」

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