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-ガク-旧友の結婚⑤

「……みんな」 ガクは、いつの間にか声を震わせていた。 「ありがとう……。 実はちょっと混み入った事情があって、式を挙げられるかどうかも分からない状況だけど—— もしそういうことが出来たなら、みんなに祝ってもらいたい。 俺とイオリのこと、パートナーとして祝福してもらいたい……」 肩を震わせ俯くと、遠くの方から 「ガク、泣いてんのか〜!?」 という陽気な声がかかった。 「おう、本日の主役じゃん」 悠真が反応すると、声の主——駿がガクの隣に立っていた。 「なになに?真由美の友達の歌に感動して泣いちゃった?」 駿がガクを小突くと、横から翼が声を上げた。 「駿先輩!! 駿先輩は、ガク先生が男の人と結婚するってなったら、式に参加されますか?!」 すると駿は、へらっと笑って言った。 「あー……。ガクってやっぱ『そっち』だったか。 ごめんなー、そういうのってこっちから聞いていいもんだか分かんなかったからさー」 「『やっぱ』って。駿はなんか知ってたの?」 翔太が訊くと、駿はぽりぽりと頬をかいた。 「大学二年くらいの時だったか? 夏休みのキャンパスで、ガクが顔の綺麗な男と並んで歩いてるのを見かけてさー。 俺が声掛けて下ネタとか振ったら、いつもはノッくるガクが嫌そうな顔したんだよ。 『今この場でそういう話題を出すな』ってオーラでさ。 あと確かその時は俺、ガクがカテキョ先で翼ちゃんと良い感じになってんじゃないかって勝手に誤解してた節があったんだよな。 それで翼ちゃんとどんな感じなんだ、って話題を出したら、顔の綺麗な男がすんごい落ち込んだ顔してんの。 うわー、なんかやべぇこと言っちゃったかな、って内心焦ったよね」 駿が言っているのは、ガクとイオリがアパートで暮らした一夏での出来事だった。 ガクが顔を上げると、タキシードに身を包んだ駿が笑って言った。 「まあなんにせよ、親友が幸せになるなら、祝うのが当然だろ? ガクも今日俺のこと祝いに駆けつけてくれたし。 俺もガクが式するなら、絶対行くから! たとえ嫁さんの出産日と被ったとしても!」 「いや、それは出産の立ち合いを優先しろよ」 「サイテーだな、駿。家庭に入るんなら、奥さんを一番大事にしろよ」 悠真と翔太からブーイングが起こる。 駿が「もののたとえだから!そんなピンポイントに被るわけねーじゃん!」と必死で反論する姿を見ながら、ガクはくすりと笑った。 そっか。ここにいる皆は、俺とイオリが二人で幸せになることを受け入れてくれてるんだ。 俺とイオリのこと、無条件に応援してくれる人たちがいるんだ。 ガクの心に温かい火が灯る。 「ありがと、みんな。 みんなと友達で良かった」 酔った勢いも相まって、涙を流しながらそう口にすると、友人達から笑いが起こった。 けれどそれは嫌な気持ちになる笑いではなく、とても心地良いひと時だった。

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