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-ガク-両親①

「父さん、母さん。 僕、麗華と離婚することを話し合いました」 ——駿の結婚式から一週間後。 ガクは、イオリと連れ立ってイオリの実家を訪れていた。 麗華が事前にイオリの両親に『伊織からとても大事な話があるので、時間をください』と連絡を入れていたこともあり、両親は二人とも仕事を入れずにイオリを待っていた。 清澄白河に降り立つのは久しぶりだった。 正確には、イオリと引き離されてからの五年間、初めは何度もイオリの家の前まで通っていたが、イオリと対面が叶うことは無かった。 社会人になってからの一年半は、仕事が忙しかったこともあり、そしてもう望みは薄いだろうと半ば諦めていた気持ちもあり、ここへ来ることはしなくなっていた。 辛かった頃の思い出が甦り、ガクは少し胸が苦しくなったが、あの頃と今は違う。 今は隣にイオリが立っている。 一緒に、同じ目的のために、あの家へ向かっている—— そうしてイオリと共に玄関のベルを鳴らすと、イオリの母親がドアを開けた。 ガクの姿を見て、思い切り嫌な表情をされたことから、やはり最悪な出だしであることは覚悟しつつ、ガクはイオリと共にリビングへ通された。 「麗華との話し合いはもう済んでいて、お互いに離婚については前向きに考えています。 ただ、何の報告も無しに雪宮家の籍を抜けることは不義理だとも考え—— 離婚届の証人の欄に、父さんと母さんからの印を貰いたいんです」 イオリがそう切り出した。 ガクがちらりと横目で見ると、イオリのこめかみから汗が滴り落ちていた。 その一方で、顔は青ざめ、酷く緊張しているのが上擦った声からも伺える。 しかしここに来る前、イオリが『まずは自分から話したい』という言葉を受けていたため、ガクは黙ったまま彼を見守った。 イオリが話した後、長い沈黙が訪れる。 俺も一応、改めて自己紹介すべきか? もう名前から地元まで探偵に調べられてるから筒抜けだろうけど。 「あの」 ガクが口を開き掛けた時、黙っていた母親が口を開いた。 「……パパもママも、イオリのことをこんなに大切に育ててきたのに……。 その結果が、半年で良家のお嬢さんとの離婚? ——呆れを通り越して、酷く落胆しているわ」

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