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-ガク-始まり⑤

「イオリも擦る?」 ガクは反対の手でイオリの手を取り、自分が握っているのと同じ場所に当てがった。 「……自分で動かしてるの……見られるのは恥ずかしい……」 イオリが泣きそうな声で言うと、ガクは 「じゃあ目を瞑ってる」 と言い、本当に瞼を閉じた。 すると恐る恐る、イオリも手を動かし始めた。 二人の手で、二人のその場所を触っていると、目を閉じていても快楽がダイレクトに伝わってくる。 もう何度の夜、イオリのことを思いながら一人で触った場所だろう。 もう何度、果てた後に寂しさを募らせたことだろう。 「……寂しかった……」 快楽に溺れそうになりながらも、ガクが呟く。 「ずっと寂しかった、けど……っ 今、は……イオリと一緒にいる……」 すると目を閉じた暗闇の中で、イオリの声が耳に届く。 「僕だって……ずっと……! ——あっ」 その刹那、イオリから熱いものが飛び出した。 シーツの上に、それらが撒き散らされる。 「あ……、ぁ……」 ガクが目を開けると、イオリは興奮と快楽、そしてシーツを汚した罪悪感もあるのか、何とも言えない表情をしていた。 「……シーツも洗わなくちゃ……。 洗濯物、増やしてごめ——」 「それも後で。シーツ一枚増えたって何も問題ないから」 ガクはそう言うと、イオリを抱き寄せた。 「まだ、続けられる?」 「……ん……」 「イオリの中に、挿れていい?」 イオリがこくり、と頷いてみせると、ガクはイオリを再び寝かせてお尻の方に指を当てがった。 「すぐ、挿れていいよ——」 指で中を解そうとしていると、イオリが小さな声で言った。 「もう、すぐにでも出したいでしょ……?」 「気ぃ遣うなって。まだ出さなくても平気。 それよりちゃんと中を——」 「もう、準備してきた」 イオリは耳を真っ赤にし、布団の端で顔を覆いながら言った。 「……来る前に、自分で準備してきたから、挿れられるよ……」 「——まじか」 ガクが面食らっていると、イオリは布団の端からひょっこり目だけを出して言った。 「五年前に、一度だけガクとした日のことが忘れられなくて……。 あれから、後ろを触る癖がついちゃって……。 ガクのこと考えながら、何度も後ろで気持ち良くなってた……」 「——はぁ」 ガクは息を吐き出すと、くすくすと笑った。 「俺たち、離れてても同じことしてたんだな。 俺もイオリのこと考えながら、数えきれないくらい抜いたよ」 そう言って、ガクはイオリの腰を浮かせた。 「じゃあ、もう——挿れるから」 「うん……」 イオリの中に、身体を沈めていく。 五年前、旅館の薄暗い灯りの下でそうした時よりも、最奥へ到達するまで時間は掛からなかった。 腰を少し動かすと、イオリの表情に熱が篭った。 「痛い?」 「……大丈夫。ちょっと、この感じが懐かしくなっただけ……」 イオリがそっと唇の端を上げてみせると、ガクはほっとしたように動きを速めた。 シングルベッドの軋みが大きくなっていく。 ベッドが壊れやしないか、それよりもイオリの身体の負担は大丈夫かと 初めはそんなことを気に掛けていたが、やがて繋がった場所以外考えられなくなっていく。

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