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-ガク-始まり⑥
「出ちゃう、かも……っ」
ガクが腰を揺らしながら言うと、イオリはそれに答えた。
「出して。ガクの全部。僕の中に出して……!」
——その後、頭の中が再び真っ白になってしまい、暫く何の情報も入って来なくなった。
自分で済ませていた時と、快楽という点では同じはずだったが、それが通り過ぎた後に訪れたのは途方もない幸福感だった。
ベッドに身体を預けると、そこに体温を感じる。
すぐ隣で、同じように息を切らしながら横になっているイオリがいる。
イオリを抱くことができたという事実が、後から幸福感となってとめどなくガクの脳内を支配する。
「イオリ——」
視界がクリアになってきた頃、ガクはイオリの身体を抱き寄せた。
「ありがとう……気持ち良かった。すっごく……」
イオリは瞼を上げると、ガクと目を合わせて微笑んだ。
「ガク——ずっと好きだよ」
「……俺も」
「ずっと大好きだったし、これからも大好きだよ、ガク」
「俺もイオリが大好きだ。
もう、どこにも行かないで——ずっと俺と生きて」
「うん」
二人はどちらともなく口付け、眠りに落ちた。
空腹なんて気にならなかった。
あらゆるものが満たされている——
身体の内側も、外側も、部屋の空気も、過ぎていく時間の何もかもが、確かな幸福に満ちている。
けど、この幸せはまだ始まったばかり。
俺とイオリの人生は、これから先の方がずっと長くて、もっともっと幸せで満ちていくから。
イオリのこれからの人生を、イオリが死ぬ時まで、ずっと幸せで満たしてあげよう。
前世の俺とイオリが手にすることのできなかった幸せを、ようやく手に入れた——
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