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-秋庭弓弦-ビルマの5日間⑩

僕は自分の軍服の襟元に手を掛け、ボタンを外していった。 こんな風に自分から『君』を誘うような真似、性に合ってないのは自分がよく理解しているのだけど。 仕方ないよね。 だって、最期にどうしても、君と肌を重ねたかった。 律人は僕が衣を一つずつ剥がしていくのをじっと見つめていた。 ちょっと恥ずかしいけれど、律人の瞳に少しでも僕を刻みつけたくて、僕は勿体ぶるようにしてシャツのボタンを外していった。 僕がすべてを晒け出した後も、律人は触れてくることを躊躇っていたけれど、やがて優しく僕の肌に触れた。 「あ……」 僕はそれだけで、全身にぞくぞくとした震えが走った。 律人の手の温度が心地良い。 律人の唇の感触が気持ち良い。 律人は初め優しく愛してくれて、それからやがて自制が効かなくなってきたのか、だんだんと激しいものに変わっていった。 僕は自分でも驚くくらい、律人が与えてくれる快楽に身体をよがらせた。 「あっ……。ああ……ッ!」 抑えたくても、自然に溢れる声がそれを許してくれない。 月明かりだけが僕たちを照らす森の中で、僕たちはそれこそ、森に住まう獣のように互いを貪った。 初めて重なり合う身体で、どんな風に動けば悦ばせられるかと、探るように体位を変えていく。 律人もそれに応えるように、動き、角度、姿勢を変えながら僕の一番感じる場所を探そうとしてくれている。 こんなに激しく愛し合って、求め合っても、永遠にこれが続くわけじゃない。 明日の朝には、僕は—— いや。今から考えてどうするんだ。 僕はまだ、生きてる。 ちゃんとここで生きて——生きた証を刻んでいる。 律人に、ガクに、僕という存在をたくさん刻みつけてやるんだ。 そしてもう一度、今度は君が、僕を見つけて—— 「律人——ビルマから、どうか生きて帰って欲しい」 ありったけの体力を使い果たした頃、僕を腕枕してくれている律人に言った。 「はは……」 律人は、やっぱり自分は生きて帰れないと思っているようで、流すような笑いを漏らすだけだった。 だからどうか生きて帰る気力を失って欲しくなくて、こう続ける。 「僕は、この瞬間だけでも律人と恋人のような関係になれたことを嬉しく思っています。 だけどもし、また会えることがあれば、それはもっと幸せだと思う」 僕たちはまた会えるんだよ。 そしてその時には、今よりずっと長く居られるんだよ。 それは律人に対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせる気持ちで言った。 「ただ——再会したとき、律人は僕の顔を覚えていてくれるでしょうか」

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