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-イオリ-第二楽章④

——式を終えた夜。 僕とガクは一緒に暮らしているマンションに戻ってくるやいなや、ベッドに倒れ込んだ。 「しよ。ガク。今すぐ」 「え……!?」 僕から誘うのが珍しいのか、ガクは驚いたように目を見開いている。 僕はもう一秒も待てなかった。 自分にこんな強い欲求があったことに驚くけれど、今はただ、ガクが欲しかった。 「ガク、僕を抱いて。ぎゅって抱きしめて」 僕が言うと、ガクはすぐに両腕を背中に回してくれた。 「どうしたの、イオリ。 なんか——いつもとちょっと違う」 訝しがりながらも、どこか嬉しそうにガクが言う。 「うん。今までの僕とは違うよ」 「結婚式を経て、俺の伴侶としての意識が高まった感じ?」 ガクが冗談めかして言ったけれど、僕は至極真面目に返した。 「今までの僕は、ガクのことが大好きだった。 だけど今は、それを超えるくらいに大好き」 前世の分を乗っけたら、倍じゃ済まないかもしれない。 「今日のイオリ、ほんと不思議。 式の途中で倒れちゃったりもしたし…… なんだかやたら甘えてくるし」 それはそう。 まだまだ甘え足りないと思ってる。 前世で渇望した分だけ、僕はまだまだガクを愛したい。 「愛してる、ガク」 「……ほんとに今日のイオリ、変……。 ——俺も愛してるよ」 ガクはそう言って僕にキスをした。 優しい唇が僕を包み込むと、僕は夢見心地で目を閉じる。 次第に唇は下の方へと降りて行き、僕の敏感な場所へ次々と触れていく。 「……ん……ッ」 ガクの舌が、お腹の真ん中で止まる。 生まれつきある、小さな痣。 そこをガクは愛おしそうに舐め、吸い付き、その度に僕は声を漏らす。 お腹が勝手にヒクヒクとうねり、もっと、もっととガクを誘っている。 ガクはその誘いに乗って、僕の内側へ潜り込んでくる。 やがてガクは堪えきれないような表情に変わって行き、僕の奥深いところへ入ってきた。 僕の意思とは無関係に、自然と声がこぼれ落ちる。 「ん……ん……!」 ガクが優しさを忘れて激しくなっていくほど、僕も遠慮がなくなっていった。 二人で暮らし始めて、もうすぐ一年。 僕がガクのアパートに転がり込んだあの日から、ずっと僕たちは幸せだ。 ただ、そんな中で、僕は一つだけ不安を抱えていた。

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