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第20話◇桃川春季⑮
春季は蓮と一緒にお風呂に入って、身体を洗ってもらった。恥ずかしかったが、思うように動けない春季を、宝物のように扱ってくれた。後孔から蓮の注いだ精液を掻き出されて、声をあげそうになったのを、なんとか堪える。ひと息ついたのは、もう昼近くだった。
「春季が動けそうなら、いつものイタリアンに行くんだけど、なにか買ってくるか?」
「だいぶマシになったから、近場だし行けるよ」
「無理をさせた俺が言うのもなんだけど、無理すんなよ」
「大丈夫だって」
蓮の甘やかしが、今日は特にすごい。春季は、くすぐったい気持ちで微笑んだ。ずっと気になっていたことが解消されて、溢れるほどの愛を注がれた。
何度「好き」「愛してる」と口にしただろう。そして蓮に、何度言葉で返してもらえただろうか。胸から溢れ出た想いは、温かい涙となって春季の目から零れ落ちた。それを蓮は舐め取り、口付けてくれたのだ。
春季は、ようやく愛されている自信を確固たるものにできた気がした。もう、揺らいだりなんかしない。そう思う。
「蓮、食べに行こう?」
「ああ、行くか」
出かける準備をしていた時に、蓮のスマホが鳴った。一瞬眉間に皺を寄せた蓮だったが、相手を見て出ることにしたようだ。ソファにぴったり寄り添い座って、春季の腰を抱きながら話をしているのを聞いていると、大学時代からの親友のようだ。
そういえば、杉本が帰ってきたのをキッカケに、飲み会をするはずだったのを思い出した。蓮は出る気はなかったようだが。
「は? お前また言い寄られたの? 恋人がいるのをハッキリ言っておかないとアイツうるさいぞ。俺は最愛の人との時間を優先しただけだ───ハハッ! 真矢の言葉を本気にする奴なんて、今さらいるのか?」
どうやら蓮の親友に、ヨリを戻そうと言い寄ったらしい。蓮のこともなにか言ったらしいが、誰も本気にはしなかったようだ。
通話中も蓮は手慰みに春季の頭を撫でている。ウットリと目を瞑って、蓮の肩に寄りかかる。
「ん? ……そうだな。お前になら紹介してもいいけど、聞いてからな。それじゃあ」
「なに?」
通話が終わると、会話中にチラリと春季を見た蓮に聞いてみた。すると様子をうかがうように尋ねられた。
「なぁ、春季。俺の親友に会ってくれるか? いつもノロケ話聞かされてうんざりしていたんだ。俺も可愛い恋人ができたって言ったら、会わせろってうるさくて。俺も自慢したいし。ダメか?」
蓮のおねだりに、春季は心配ごとを聞いてみた。
「オレ、男だよ? 蓮は平気なの?」
「それは関係ないな。最初から男を好きになったって相談していたから」
「えっ? 言ってたの?」
春季は思わず大きな声をあげた。まさか、そこまで話していたとは思わなかったからだ。
「春季が好きになって、すぐに相談してた。応援されてたから、春季は何も心配しなくていいんだ」
「そうだったんだ……うん。それなら、会ってみたい。昔の蓮の話も聞きたいな」
「ありがとう、あとでアイツに連絡しておく。さて、腹も減ったし食いに行くか」
「うん」
蓮のマンションの近くにあるイタリアンのお店までの道を、自然と寄り添って二人は歩くのだった。
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