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第一部最終話 ハンバーグと戻ってきた日常

 広いマンションの一室で、少年が冷蔵庫に食材をしまう。今日は挽き肉の特売日だった。自由に金を使っていいと言われてるとはいえ、安く買えるのは嬉しいものである。 「ユーウーちゃんっ」  その後ろから赤髪の男ががばりと抱きついて、少年の頬にひとつ口づけを落とした。 「わっ、凛危ないだろ?」 「またまたぁ。ユウちゃんだってぎゅ~ってされるの好きでしょ?」 「……そりゃ、そうだよ。凛のこと大好きなんだから」  悠はふっと笑って、凛の手に触れた。 「ね、ユウちゃん、今日のメシなぁに?」 「ハンバーグだよ。凜、好きだろ?」 「うんっ! ソースたっぷりがいいっ。ユウちゃんの作ってくれるやつ、すっげーうまいから!」 「わかった、いっぱい作るよ。けど野菜も食ってくれよ?」  赤髪の男の腕の中で、少年は幸せそうに微笑んだ。  そっと唇が合わさって、指を絡めて。またひとつ、幸せを刻んでいく。  これは、ちょっと料理が得意な少年と、少年だけのヒーローの、小さな恋の物語。  

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