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#3
「店長って彼女いるのかなぁ。」
夏希を待ちながら聞こえる声。
最初は気にしてなかったけど、部屋の前で話し込んでるせいで嫌でも聞こえてくる。
「彼女いたとしてもよくない?
店長押しに弱そうだし押したら案外いけそうじゃん?」
声からしてまだ高校生ぐらい。
なんでケツの青いガキにまでそんなこと言われてんの。
てかなに、いけそうって。
お前ら夏希のなに知ってんの?
どこが弱くて感じるかも、あいつの甘えた声も、一人で寝られないことも何もしらないくせに。
悪いけど夏希のこと渡す気ないから。
ドアを開けて少し覗くと相手も俺に気付く。
「わ、店長のお友達さん!今の内緒でお願いしますね!」
「内緒でいいの?告ってみたらいいのに。」
それで手酷く振られれば?
――なんて手酷く振られるのは俺か。
ガキに対してみっともねぇ嫉妬。
将来性のない俺と一緒にいるより女選んだ方が建設的だもんな。
***
さっきまでいい雰囲気だったのに、さっきのこと思い出してイライラしてきた。
夏希はなんにも悪くなくて俺が1人で思い出してむかついてるだけ。
あぁ駄目だ、夏希に当たりそう。
くしゃくしゃと夏希の頭を撫でて気持ちを切り替える。
「飯食いいこ、遅くなったらまたコンビニ飯になるし。」
「…やだ。だってお前なんか変じゃん。
飯食い行ったあと俺振られたりすんの…?」
は?何言ってんの。
俺がイライラしてるからそんな考えになったの?
ホント馬鹿。馬鹿すぎて愛おしいわ。
「振らねぇよ。もー。
お前ほんと無理だわ、ばか可愛い。」
夏希を抱きしめると、胸元をぐいぐいと押して離れようとする。
「は?何でそうなんの?全然ついてけねぇ。」
「いい、いい。なーんも気にしなくていい。
もういいや、続きしよ。」
いやいや、と話を続けようとする夏希の口を塞いで耳を撫でるだけで途端に大人しくなる。
こんなん知ってんの俺だけじゃん。
他の誰にも見せないし教えない。あのガキなんかには絶対。
エプロン姿の夏希は可愛い。
普段着ないネクタイにスラックスも似合ってんだか似合ってないんだかわかんないけど、見る度に可愛いって思ってる。
脱がすのもったいねぇ。
でも脱がさなきゃどこも触れないし舐めれないし。
「ちょちょちょ、待って、舐めんな
まじで汚い、風呂入ってない…っ」
「大丈夫だって。気にしすぎ。」
夏希の大きくなったそれを舐めると顔を真っ赤にして隠す。
隠したところで耳まで真っ赤だからすぐ分かるけど。
「…ぅ、ん…っ、もういい、も、やだ…っ」
「んー?感じてたんじゃねぇの?」
「そうだけど夏芽のでイキたいから今はいい…」
なんなのこいつの可愛さは。どこが限界地点なの。
ずっと可愛い更新してくるじゃん。
ここのソファーはそんなに大きくないけど、夏希を寝かして動くくらいなら造作もない。
「……きっつ、もう少し力抜けって。」
「そんなん言ったって…っ、あっ、ん…っ」
耳を舐めるだけで力が抜けて、そのタイミングで奥までいれると反動で夏希がイく。
「は、勢い良すぎ、作業服ついたじゃん」
「ごめ…っ、あっ、待っ、今動くの待って…っ」
口癖なのかすぐに待ってって夏希は言う。
本当に待ってほしそうなときは待つけど、今の待っては待たなくていいやつ。
「なぁ俺のこと好き?」
「ん、好き、大好き…っ、夏芽、なつ…っ、」
あぁこれ、本当にたまんねぇ。
余裕のない夏希の顔も、組み敷いて気持ちよくさせるのもそれを制するのも全部、俺しだい。
夏希の余裕のない顔を見てるとまだまだいじめたくなるけど、昨日さんざんいじめ倒したし今日はいいや。
「夏希おいで。首に手回して。座位で一緒イこ。」
夏希を起こしてくっつくと、夏希のほうが我慢できずに動く。
「あっ、あ、ぅ…っ、んん…」
「…えっろい顔。そんな気持ちいい?」
「ん、気持ちい…っ、夏芽は?夏芽は、俺のこと好き?」
朝まで一緒にいたのに昼も夜も会いに来ちゃうのに好きじゃないわけないだろ。
気持ちよくて声が出ちゃうのに不安そうに眉を下げて泣きそうな顔。
「好きだよ、当たり前だろ。」
「……っ、俺頑張るから、一緒イこ…っ」
そう言ってさっきより激しく動く。
一生懸命なのがほんとに可愛い。
「あー、やばいイキそ…あ、むり、イく…っ」
夏希の中に出したのと同じタイミングで夏希もグッタリとして言う。
「もー無理、昨日からイキ通しでさすがに出ない…
さっきので俺の精子打ち止めかもしんない。」
「あっはは、打ち止めしんど、はは」
くっついたまま少し笑って抱き合う。
いつもは喧嘩も多いけど、たまにこうしてただ仲良くするのも悪くない。
悪くないっていうか俺も、多分こいつも仲良くしたいのに、お互い短気で口が悪いからすぐ喧嘩になるだけ。
「なぁ今、女に告白されたらどうする?」
夏希を抱きしめたまま聞くと、頭にすりすりと頬を寄せながら言う。
「恋人いますーって断るよ?夏芽は?断んないの?」
「いや俺も断るよ。お前いるし。」
そう言うと抱きついてくる。
俺もこいつも素直になればこんな風に仲良くできるのに。
いれっぱなしだったのを抜くと中からぱたぱたと精液が落ちてきて、2人で慌ててソファーをふく。
「…お前バイトの子から好かれてるよ。
黒髪で可愛い雰囲気の子。
押しに弱そうって言われてんぞ。ちゃんと断れよ。」
服をなおしながらきょとんとした顔でこっちを見てきて、それを見つめ返す。
今日だめだ、何してても可愛く見える。
たまにあるこいつが何してても可愛いって思える日。
普段腹立って仕方ないのに。
「なんでそんな顔で見てくんだよ。」
そう言って頬に手を擦り寄せると猫みたいに寄せてきた。
指を口に添わせるとそのまま舐めてくるあたり、こいつほんとえろい。
無意識でやってんのかな。
指から口を離すといつもみたいな顔で笑って言う。
「夏芽がヤキモチ妬いてんの初めてみた。」
「そりゃ妬くだろ。
同じ職場に好意持ってる女がいたら。女には勝てねーじゃん。」
なんで?と普通に聞いてくる。
こいつにとっては男も女も関係ないのか?
「なぁ聞いてる?なんでって聞いてんじゃん。」
「聞いてるよ。
夏希は結婚とかこの店の次の店長とか考えたりしねぇの?
おまえの代でこの店潰す気?」
返答なし、無言。
まだ25歳。でも、もう25歳。
将来を考えるのに早くもないし、遅くもないだろ。
俺はお前の将来、俺のせいで潰したくないよ。
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