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第9話 師匠 R18※触手注意

「ン、……ぁああ……ッ!!」  乱れたベッドの上、アサギはその身に何人目のものかわからない精を受け止めのけぞった。反動でベッドヘッドに繋がれた首輪の鎖がチャリチャリと鳴る。  解放された声から放たれる魔力はベッド上部に組み込まれた機械へ流れていく。  ここへ連れ戻され、兄に会わせてもらえないままずっと貫かれ続け、もうどれ程の間そうしていたのかわからない。  アサギの精は疾うに尽き今はただ揺さぶられるまま鳴くだけだ。 「もう……や、イヤぁぁ……ッ!!」  また入り込んできた熱に悶えて動かそうとした手は枷に阻まれてほんの気持ち程度しか動かない。 「あ、ひ……ッ、やぁぁ……」  結合部からは先に注がれた白濁が注挿の度にグチュグチュ音をさせながら溢れ、かき混ぜられて泡立つ。 「んぁ、アァ……っぁん……っ!!やめ……っやめてぇ……ッ!!ゃぅ!ぃ、アァ、あぁーーッ」  泣きすぎて腫れた目元にまた新たな涙を溢れさせながら脳裏に過るのは、初めて自ら体を重ねたいと切望した愛しい男の姿。  彼は……彼らは無事なのか。  ケイ達と離れ離れになった時、ソラは『大丈夫だよ』と自信を持って言っていた。だから今回も側にいたら大丈夫だよ、と微笑んでくれていたはず。 (ソラ、ソラ、抱き締めて欲しいです)  もうソラ以外に触られたくなかったのに。 「ぁ……ッ」  ついに声も枯れた頃、漸く静寂が訪れた。栓をするものがなくなった後孔からはトロトロと白濁が流れ落ち、既に意識は朦朧としている。 「気分はどうだい、俺の可愛いヒトハ」  飛びかけた意識を繋ぎ止めるように頬に触れたのはいつからいたのかわからない、カツキ。零れ落ちる涙を手の平で拭って乱れた呼吸を繰り返す唇を塞ぐ。 「ん……、ふ……ぅ……」  唾液の絡む音を響かせ、戯れるように赤く腫れた胸の粒を撫でられた体は無意識にビクリと跳ねた。 「カツ、キ……っ、もうイヤ……です……っ」  ちゅ、っと音をたて離れた唇を銀糸が繋ぐ。零れた唾液を舐めとりながらスルスル太股を撫で、下肢の残滓を満足そうに掬い取ったカツキに嗄れた声で必死に訴えた。  もうイヤだ。  ソラじゃない。ソラじゃなきゃイヤ。  会いたい。ソラに会いたい。 「大切な者が出来た気分はどうかな?お前は自分の身は省みないが……他人の身は大切なんだろう?」  心の声が聞こえたわけではないだろう。それなのにまるで見透かすようなカツキの言葉にアサギは力なく首を振った。  お願い、ソラに……みんなに手を出さないで。そんな想いを込めて。 「彼らは逃げた。お前さえ大人しくしていればもう手は出さないよ、可愛いヒトハ」  くすくすと笑うカツキが優しく目元を細めて太股を撫でていた手で頬を撫でる。ぬるり、と擦り付けられたのは誰のものかわからない白濁か。 「カツキ様」  ドアの閉開音と共に聞こえた最愛の兄の声に、アサギは疲れきった体に鞭打って首を動かす。未だに腕の枷は外れていない。 「兄上……!?」 「しかし甘やかすばかりが教育ではないよね。俺から逃げ出す悪い子にはお仕置きが必要だ。準備があるから……暫く兄弟で語らうといい」 「ここまでしておいて甘やかしていると?」  ベッド上のアサギにはもはや動く気力もない。抗おうとした手首は血が滲み、所々噛まれたのか歯形の形に傷がついている。腹が膨れる程注ぎ込まれた白濁はトロトロと零れ続け、涙腺が壊れてしまったかのように涙を落とし続ける琥珀は今意識を取り戻しているが、さっきまでは虚ろだった。  今は兄を愕然と見つめている。  カツキはクスリと笑っただけで何も言わずに出て行った。同時に聞こえた施錠音に溜め息をついて震え出した弟の頬を撫でる。 「アサギ、大丈夫かい?」  大丈夫なわけない。でもそう尋ねる以外に言葉がなかった。 「兄、上……、その……目は……?」  アサギの兄……リツは左目を撫でて困った様に微笑む。  サファイアのような澄んだ青が印象的なリツの瞳の片方は、無惨にも潰された。アサギを逃がしたその日にカツキによって潰されたのだ。  アサギがカツキの物であるように、リツは皇帝の物。流石のカツキも父親にリツの美貌を損ねたと激怒されたが、翡翠の義眼を嵌め込んでやったことで落ち着いた。こうするとまた違った趣があるな、と上機嫌だった皇帝もヒトハなど着せ替え人形程度の扱いでしかない。  飽きれば捨てる。  未だ執着されてるのはリツの美貌と、アサギを守る為に身につけた手管に飽きないだけ。 「私の事は心配しなくていい」 「でも……っ」 「アサギ、いいんだ。それよりアティベンティスの話を聞かせてくれる?」  頬の白濁を拭ってやりながら優しく笑う。これ以上この瞳を気に病むな、後悔はしていないのだから。そんな想いを言外に髪を撫で、後孔の残滓を掻き出してやりたいところを耐える。  敏感になった体にそんなことをしては話も出来ない。カツキが戻る前に話を聞きたい。 「……兄上、僕……大切な人が出来ました」  その気持ちを察したか泣き笑いのアサギが言葉を紡ぐ。 「そう。どんな人かな」 「優しい……とても優しい人です。腕の中……、兄上みたいで、安心、出来て……っ」 ぽろぽろ零れる涙は何度拭っても溢れて落ちる。 「ひ、ぅっ、兄、……っ兄上……ッ、会いたい……っソラに会いたい……!でも……っ」  自分が側に行ったらソラが、みんなが危険にさらされる。  会いたい。でも……会えない。 「諦めてはいけないよ、アサギ。きっと……」  きっと、の続きは言えない。それはリツにももう途方のない夢物語のような事だから。  きっと、いつか助けが来るだなんて。 (信じ続けるのは……)  苦しみしか生まない。諦められたら楽になるのだろうか。いっそ自分達が王家と係わりのないヒトハであれば半端な期待など持たずに道具であり続けられたのか。  泣き続けるアサギの額にキスをしてやり、今度こそ残滓を掻き出してやろうと腕を伸ばしかけた時、扉から開錠音が聞こえアサギの体がビクリと跳ねる。 「さぁ、お仕置きの時間だ」  カツキは酷く愉しそうに笑った。  ◇  煙幕に遮られながら逃げ込んだ場所はステュクスにある師匠達のアジト。灯台もと暗し、こんなすぐそばに潜んでるなんて思わないだろう。 「……っとにこのガキ共は!俺達から何学んだ!」  あの状況に陥った訳を話したらゴン、って頭に鐘が鳴り響いたみたいな拳骨が落ちて頭を押さえた。凄いよね、ケイに拳骨落とせるなんて世界中探してもこの人しかいないと思うわ。  あの時カッツとヒエノが動かなかったのは近くに師匠達がいるのに気が付いてたからで、そのカッツ達はまた仮面マン……センティス兵の動きを探りに出てる。 「その辺にしておけ、カナ。他はともかくソラの脳細胞が死滅する」  俺の脳細胞そんなに少ないの!?てゆーかどいつもこいつも俺への扱い酷くない!? 「酷ぇよ師匠!!」 「アヤ、あまり苛めてやるな」  アヤって呼ばれる色んな意味でムッツリ――怒ってないのにムスッとして見えるとか、こっそりエロいとかそんな意味――の最年長アヤヒトは俺の師匠、銃剣士。  黒目黒髪で、3×歳のくせに20代に見える。乙女じゃないんだから正確な年齢教えてくれたらいいのに教えてくれない。  そんでカナ、って呼ばれたカナトはケイの師匠の魔剣士で、いつも飄々としてるから割りと本心が掴めない。だからこんな風に拳骨落としてくるとか相当お怒りだ。  んで、雰囲気からも滲み出てる穏やかな好青年ユキヤはセンの師匠、魔導師。ついでに医者だ。けどセンに暗器を教え込んだのもこの人。  センと同じく弱いと思って近寄ったら火傷するよ。あと俺達には優しく話してくれるけど、師匠には結構ツンツンしてる。 「っとにこのバカガキ共ッ!!」  カナさんはまだお怒りだ。ガキガキ言うけど俺達だって二十歳は超えてるっつーの。 「追われてるってわかってて馬鹿正直に門から入るやつがあるか!」  う"、ごもっとも。  ウェンリスの包囲網破って油断した。今だからわかるけど、敢えて追い詰めて、追い詰めておきながらギリギリでわざと逃がして……、最後にここで「はい、お疲れ~」って捕まえる気だったんだ。  でもそれってつまりアサギが必ず戻るって確信してたって事だよな。アサギのお兄ちゃん大好きぶりを知ってるなら当然か。 「おうちに帰るまでが遠足ですよ!全く俺は情けなくて涙が出らぁ」  くっ、なんて言いながら涙を拭うフリをしてくるカナさんはとりあえず無視して――ソラのくせに生意気だぞ!って殴られたけど――、師匠を見る。 「逃げんな!っていう鳩便はこの為か?」 「アサギを助けたい」  本来はアサギのお兄ちゃんを助ける為だったのに奪い返されてしまった。 (怯えてたな……)  最初に言ってた。連れ戻されたら何されるかわかんない、って。  当たり前みたいにかけられた鎖。アサギの為って言いながらアサギの友達をあんな姿に変えて、それもまた当たり前みたいに笑ってた。  最後にアサギが触れた左手を見る。酷く冷えて震えてたあの手。  今あの子がどんな目にあってるのか想像しただけでもムカムカしてくる。実際はきっと俺の想像なんか追い付かないくらい酷い事されてるんじゃないか。そう思ったら胃の辺りが冷たくなった。 「相手はセンティス王家だ」 「だから何だよ」  苛ついた声はケイの物。  ケイだって奪い返された事に責任を感じて……そんで多分アサギの心配をしてる。センもまた……言うまでもない。弟に重ねたのかアサギを一番可愛がってたのはセンだ。 「センティスと戦争でもする気か?」  俺達の視線を受け止めて、師匠は長い足を組み換えながら言う。 「……アサギとアサギのお兄ちゃん助けたらあのワープ装置壊しちゃおうよ」  そしたらいかにカツキでもこっちには来られない。ワープ装置壊せるかは知らないけど。  しばし沈黙。  そのあとカナさんは大爆笑、ユキさんは苦笑い、師匠はおっきな溜め息ついた。 「いっやー、ソラお前……バカだな!」 「んな!?」 「ソラがバカなのは元からじゃねぇか」 「うん、アッ君男見る目ない」  何なのこれ!俺何か変な事言った!?つーかここまで貶されるような事言いました!? 「まあでも、それでこそアヤの弟子って感じだなぁ」 「俺はこんなバカに育てた覚えはない」 「な、何だよさっきから!!酷くね!?イジメ?イジメなの!?」 「あまり苛めてやるなって」  ユキさぁん!!アサギがいない今唯一の癒しだ!でも飛び付くと師匠にしばかれるから我慢。何気にデキてるらしいからねー。そして意外に師匠のがベタ惚れらしいしねー。嫉妬深くて恐いよ。いや、ユキさんも稀にデレるけど。軽くツンデレってやつだ。 「そろそろ本当の事を話してやったらどうだ」 「本当の事?」  ツンデレユキさんに促されて師匠はまた溜め息をついた。 「お前達の言うアサギと兄を助けた所で、他のヒトハが囚われてる限り彼らはきっと真の意味で幸せにはなれないだろう」 「それは……」  アサギの性格上お兄ちゃんを助けたら次は他のヒトハの心配をするだろう。あの優しい子が自分達だけ幸せになってそれで終わり、ってのは確かに微妙。  ん?あれ??待てよ? 「てゆーか何で師匠ヒトハの現状知ってんの?」  センティスにはヒトハが普通にいることとアサギがヒトハだってのは話したけど。 「……何故俺達が傭兵を辞めてあっちこっち回ったと思う」  俺達はワケわからんくて顔を見合わせる。 「ヒトハをアティベンティスで受け入れさせる為だ」 「へ?」 「どういう事?」  俺の間抜けな声とセンの訝しげな声が重なって、ケイは無言で首を傾げた。 「俺達がセンティスの現状を知ったのは10年前――」  10年前、それなりに名の知れた傭兵だった師匠達はセンティスの密入国者からヒトハの現状を聞かされたらしい。俺達は知らなかったけどそれから10年、師匠達は傭兵をしながら足場を固めて行った。  アティベンティス側ではヒトハを受け入れてもらえるように働きかけて、センティス側の工作員にはこっそりとワープ装置へのトンネルを掘らせたり“その時”が来たら直ぐ様国境を越えられる準備を進めさせた。  でもヒトハへの偏見はなかなか覆せなくて、最近になってようやく一部の都市が受け入れ体制を整え始めたんだって。  それがアクセロスとウェンリス、それからここステュクスだ。 「ステュクスは楽だったぞ~?」  なんてカナさんが笑う。  真っ先に受け入れを決めたのはステュクスだ。でもステュクスだけでは受け入れられないから、その時点ではヒトハ救出までいけなかった。 「どうせあれだろ?『え?いいよー?』だったんだろ」  ステュクスの都市代表者(ラーナ)だったら言いそうだ。実際そうだったらしくユキさんが軽く吹き出して、師匠も珍しく笑ってる。 「流石お前のオヤジだと思ったよ」 「あんなジジイと一緒にしないでくんないかな!?」  つーか俺は家捨てて来たんで!もうオヤジじゃねーし! 「バカって遺伝すんだな」 「ちょっとケイ君!?」  ホントに酷すぎない?俺の扱い!!あぁアサギに会いたい!癒されたい!! 「あ、てゆーか受け入れ体制整ってるんだろ!?なら早く助けに行こう!」  こんな話ししてる間にもあの子がどんな目に遭ってるのか……。一刻も早く助けに行かないと!  ◇ 「や……いや……ッ!!カツキ……!」  ガチャガチャと手枷が音をたてる。アサギは外れるわけもないそれを外そうと必死で暴れるが、いたずらに傷が増えるだけだ。  リツは 「唆したのは私です!アサギには何の非もないではありませんか!!」  という悲鳴に近い声の叫びを残して隣室に連行された。隣では皇帝とその客が性欲処理をするべく待ち構えている。それはただの日常。  しかし、アサギに迫るのは非日常である。  ズル、ズル、と濡れた何かを引き摺る音をさせながら近寄ってくる“ソレ”。 「いや、嫌です!カツキ、ごめんなさい、ごめんなさい……ッ」 「お仕置きだ、と言っただろう?それにね、俺は楽しみでもあるんだよ可愛いヒトハ」  豪華な椅子に腰かけて足を組むカツキはアサギの必死な謝罪に艶然と微笑むだけだ。 「お前からはどんな子が生まれるんだろうね?」 「いや、カツキお願いします!許して……ッ!……ひ……っ!カツキ!!ごめんなさい、もうしないから許して……っ!!」  スルスルと足を絡めるのは緑色の半透明な触手。咄嗟に引こうとした足を思いの外強い力で引き戻してグイ、と大きく開かせる。 「いや!カツキ!!」  嫌だ、ごめんなさい、許して、を繰り返すアサギの声を無視してカツキはただ見つめるだけだ。やがて触手の本体にあたる塊がズルズルとアサギの横たわるベッドへと乗り上げた。  ブヨブヨと揺れるスライム状の魔獣。それはアサギの中に溢れるほど注がれた精に反応して動いている。 「いやぁぁッ!」  体をヌルヌルと這い回っていた触手が後孔の残滓に気が付いた。途端、 『キュル……クルルルル……』  と喜ぶかのような声が上がる。 「や、やめて!おねが……ぃ……あぁぁ!!」  うねる細い触手の一本がまず後孔にズブリと侵入した。 「ア、ひ……っ、いやぁぁ!!」  ヌチュヌチュとまるで味見でもするかのように中を掻き回し、どうやら先端の口のように見える器官で中の物を啜っているらしい。何度も出し入れを繰り返し白濁を啜ってはキュルキュルと鳴く。 「やだぁ……っ、カツキ、ごめんなさいぃ……!カツキ……カツキぃ……!」  人外の物に体を蹂躙させる恐怖は初めて何人もの男達にその身を暴かれた時以上。怖くて気持ち悪くて、絶対に縋るまいと思っていたのに今この場で唯一助けられる男を呼んでしまう。 「ひぁ……っ」  限界まで開かされた足を持ち上げられ、全てを魔獣に晒すような体勢に必死で身を捩るが当然ながら効果はない。 「アッ!?あぁぁ!!いや!もう入れないでぇぇッ!!」  アサギの叫びと共にヌルリと二本目が侵入した。魔獣の体液と注がれた白濁が交じって溢れ、持ち上げられている所為で割れ目から背中を伝ってシーツに染みを作る。 「ヒ、ン……ッ!やめ、やめて……ッ」  ズチュ、ズチュ、と抜き差しする度に激しい水音が響き、アサギがガクガクと震えているのをやはりカツキは昏い微笑みのまま見ているだけ。少し前までの凌辱にすでに精は尽き、出すもの等ないのに強制的に与えられる快楽はもはや苦痛しか生まない。 「やだぁ、兄上……!兄上ぇ……ッ」  カツキは動かない。  ソラはいない。  リツとて隣室で何をされているかわからない。  それでも恐怖に支配された頭は助けを求めてリツを呼ばせる。ソラを呼ばないのは名を知られればその身に危険が及ぶかも知れない恐怖を抱いたからだ。 「兄……ァア……ッ!!痛い、いたぁ……ッ!!いやだ、いやだいやだァァ!!」  ギチギチと狭い後孔に無理矢理侵入した三本目。 「壊……、壊れるからぁ……ッ!ぃ……ッあぁぁーーーッ!!」  中に侵入した触手達は我が物顔で暴れまわっているようで、魔獣に抱えられた足がガクンガクンと人形のように揺れた。 「!?やだ、何……っ!?中が……ッ」  アサギはドプドプと何か粘ついた液体が胎内に吐き出されたのを感じ思わず固く閉じていた目を開けてしまった。ヌルリ、ヌルリ、と緑の液体を纏わりつかせた触手が糸を引きながら後孔から抜け出して……次にそこへ近寄ってくるものが視界に映りこむ。  それは管のようだった。触手より遥かに太く、血管のような物が浮き出てビクンビクンと不気味に動いている。 「ウソ……、いや、……いやッ!」  ググ……っ、と無理矢理侵入してくる管のような物。逃れようとがむしゃらに暴れるアサギに苛立ったのか、魔獣はアサギがどんなに暴れても外れなかった手枷を引きちぎると腕に触手を絡めて吊り上げた。 『クルルルル……』  顔と呼べる位置までアサギを持ち上げ、再び管の挿入を開始する。 「やぁーーーッ!!やめてェェッ!!」  ズッ、ズッ、と僅かに抜き差ししながら奥へ奥へと進む。時折ゴリッと前立腺を掠め、感じたくもないのに慣らされた体はビクンと反応した。 「あン……ッやぁ……っ、抜いてぇ……ひぁ、あぅ……」  全てを納め終えた魔獣はアサギの体を吊り上げたまま激しく揺れ始めた。 「あぁ……ひぁぁ!やだよぉ……ッ」  バタつく足は無意味。吊り上げられたままの手首はヌルつく触手のおかげか擦れはしないけれど随分な力で締め付けられて手首の骨が折れそうだ。相手が何を考えているのか当然ながらわかるはずもない。  ただそのブヨブヨとした魔獣は揺れながらアサギの足を抱え直すと一度ズルリと抜いた管を再び挿入する。 「あぁ!!あ、ぁ、ぁ……ッ!?やぁぁぁ!?何……っ、やだぁぁ!!」  ヌチ、ヌチ、と音をさせながら暫く注挿を繰り返していたやがて落ち着く場所を見つけたのかさらに激しく体を震わせ始めた。同時に差し込まれたままの管の中を硬い何かが進んでくる。 「……まさ、か……」  先程のカツキの言葉。    ――お前からはどんな子が生まれるんだろうね? 「あ、ひ……いやぁ!いやだァァッ!!やめて……ッお願い、いやぁぁぁッ!」  必死で抗った。嫌だ、嫌だ、と。身を捩り、頭を振って、とにかく体の動く場所を動かして。それなのに。一際大きな圧迫感と共に腹がボコリと膨らんだのを視界に収め、アサギの意識は自己を守るために全てを閉ざした。 「気を失ったか……」  胎内に子種を埋め終えた魔獣は一声鳴くと、スルスル影へと消えていく。それを見届けたカツキは散々乱れたベッドの縁へ座り、泣き腫らした目元を一撫でするとその頬を思い切り平手で叩いた。 「……っ!?」  衝撃に一瞬の意識喪失から目を覚ましたアサギが状況を把握しようと瞬きを繰り返し、そして寸前の出来事を思い出したらしい。恐る恐る腕が上がり、その膨らんだ腹を撫で体が強張っていく。 「わかるかい?ここに、魔獣の子がいる」 「あ、……ああ、」  否定したくてフルフルと首を振っても手の平に当たるのは膨らんで少し硬い腹。存在を主張するように胎内の何かがグルリと動いた。 「や……ぁ……」  涙は枯れることなく溢れ続ける。  魔獣の子。そんなものが自分の胎内にいる。 「生まれる子はきっと魔力が高い。立派にアティベンティスを滅ぼす兵器になるよ」  元々スライム状の魔獣は物理が効きにくい。それに加えて魔力も高くなればほぼ無敵だ。魔力の高いヒトハと魔獣の子はどうなるのか。お仕置きと称した生物兵器実験である。 「いや!……いや、です……っ」 「アティベンティスのお友達はお前を恨むだろうね?」  生まれる子供がどうなるかはわからない。それでもカツキには恐らくうまくいく、という確信があった。例えなかったとしても同じことを言っただろうが。 「それより人ではない物と交わり子を成した穢らわしいお前を、アティベンティスのお友達は受け入れてくれないだろう」  誰を思い浮かべたのか、目に見えて青ざめたアサギが一生分ではないかというくらいボロボロと涙を流す。 「いやぁ……っ」 「可哀想にね。お前を受け入れられるのは俺だけだよ、可愛いヒトハ。お前は大人しく俺の物でいればいい」  他の居場所なんてどこにもない。  どこにも作らせはしない。

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