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第19話 さようなら 微R18
アサギとカナさんは暫く二人が消えた濁流を見つめてて、やがてカナさんがポツリと「戻ろう」って言って。結局カッツは最後までカツキ達に気が付かなかったらしくて驚くと同時に悔しがって、でも顛末に無言になった。
それから俺達はひとまずステュクスに戻ったんだけど、いる筈のセンティス軍はすでに撤退。多分カツキの命令だと思う。師匠にも何があったのか話して、歴史学者と天文学者の手配してくれてようやく一息つく時間が出来た。アジトはぶっ飛ばしちゃったから普通に宿屋。実家は嫌だ。親父煩いから。
アサギはあれからずっと無言だ。アオが心配してキュゥキュウ鳴いてるけど無意識のように撫でてやるだけ。
「アサギ、おいで」
ベッドに腰かけて、ぼんやり突っ立ってるアサギを隣に呼んだ。素直に隣に座るアサギを抱き締める。
「今何考えてる?」
「……カツキが何故あんなことをしたのか、考えていました」
「……そうだね。あいつの事大っ嫌いだけど、せめて理由くらい教えてって欲しかった」
俺は悲しいとかそんな感情になんない、むしろアサギにあれだけ酷いことしてきたんだから……って思っちゃう。けど、アサギはどうなんだろう。あれだけの事をされても長く一緒にいたのはアサギだ。
「……ソラ、もっとギュってして下さい」
アサギはそれ以上カツキの事に触れずにそう言った。
「アオが潰れちゃうよ」
ってゆーか俺がアオに噛まれるって。
「寝ちゃいました」
ちょっと動かしたらおっきなお目々がうとうと開いたり閉じたりして、またそのまま寝ちゃった。
「ソラ」
センが用意してくれたアオ用のベッド――赤ちゃんが寝るような籠――にアオを寝かせたアサギはまたギュ、っと俺にしがみつく。
「……どうしたの」
「星が衝突したら……」
「……うん」
多分死ぬよね。それ避ける為に過去のヒトハが壁と柱作ったんだもん。つーかこんな遺産残さないで欲しかったよ。
「今師匠達も色々考えてるし、学者達も動いてるから」
大丈夫だよ、とは言えない。そんなの完全な気休めだ。大丈夫、って信じるには情報が足りなさすぎる。
「……アサギと一緒なら、何だって平気だよ」
泣きそうな顔をしたアサギがぶつかってくる勢いでキスをした。
僕の“好き”を信じてくれるならソラが欲しいです、なんて直球のお願いに苦笑して現在部屋のお風呂。いくら寝てるとは言え、アオの側では流石に出来ない。
「ん……っ!あぁ……っ」
びくんと跳ね上がった体を抱き締めて後孔から指を抜く。相変わらず綺麗な肌は吸い付くような手触りで気持ちいい。それに初めて聞いた艶っぽい声が劣情を煽る。
「ソラ……っ、早く……」
もう挿れて、って切なく囁かれたら我慢なんか出来ない。アサギの背中を壁に押し付け片足を抱えると一気に貫いた。
「ひぁぁぁ!」
「ごめん、アサギ……っ」
「あ!あ、ぁ、いいです……!もっと、もっとソラを感じたい、です……っ」
「何で煽るんだよっ」
不安定な体勢が怖いのか必死でしがみついてくるアサギを抱え直して。
「ん、ンン……!んぅー!!」
唇を塞いで突き上げる。中は熱くて媚肉はうねるように絡み付く。吐息すら奪い尽くすような口付けの合間に好きだって囁きあって。
星の衝突がいつなのかはわからない。空に浮かんでるのがホントにセンティスならもしかしたらそれは近いのかも知れない。学者達が答えを出すまで世界はあるのかな。
「アサギ」
「ひ、ぁ、アァ!ソラ、もっと……!!」
「うん、一杯注いであげる……」
「ん、あぁぁ!!」
「世界がどうなったって、最後まで側にいるからね……!」
コトリ、と微かな音をさせてペンを置いた。「もうちょっと眠ってて」と声に魔力を乗せて囁いたソラはスヤスヤと寝息をたてている。キュウ、と小さく鳴いたアオの頭を撫でた。
「これでいいんだよ」
緩やかに曲線を描くソラの癖っ毛は思いの外柔らかい。指を髪から唇まで滑らせる。いつも欲しい言葉をくれる唇だ。その優しい言葉も、子供みたいな笑顔も、大人の微笑みも、熱い口付けも器用に動く舌も記憶した。一度口付けて手を握る。ゴツゴツしたタコだらけの男の手。この手が、癒して抱き締めて翻弄してくる。
もう一度名残惜しげに口付けて。明け方まで愛し合ったこの熱は忘れない。
「……さよなら、ソラ」
(これが答えです、カツキ)
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