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皇太子と世捨て人2 R18 ※ショタ注意
それから1年。
バシン、と鞭の音が響くと同時まだ変声期も迎えない高い声が微かな悲鳴を上げた。
「きゃぁ……ッ」
天井から伸びる鎖に両手を吊られた子供の柔らかな尻がみるみる赤くなっていく。
「ごめ、なさ……っ、ごめんなさいぃ……」
「全く、教えた事も出来ないのかな?困った子だ」
ヒュ、と風を切る音はしっかりと学習している彼がギュウっと目を閉じた。
「あぅ……ッや、痛い!痛、やだぁ……っ!ごめんなさい!ごめんなさい!やめてくださ……!お願い……!ごめんなさい!!」
続けざまに振り下ろされる鞭に白い裸身が赤く染まっていく。所々血が滲むまで打ち続け、その間アサギは泣きながら謝り続ける。
「ひっ、うぅ……っ、め、なさぁ……カツキ、ごめんなさい……ッ痛いよぉ……っ」
兄ちゃん、と言いかけて慌てて兄上と言い直す彼の背を打つ。
「やぁッ!!痛い、ひ、っく……兄上……兄上ぇ……」
彼が助けを求めて優しい兄を呼ぶのは毎回の事。彼の兄もまた隣室で望まぬ蹂躙を受けているのだけれど、アサギはただ兄を呼ぶ。そしてリツもまたアサギだけは、と言い続けるのだ。
「さて……お前は誰の物だ?」
「ぼ、僕は……カツキの、です……」
怯えて震える声がそう紡ぐのに笑みを浮かべる。
「なら明日は間違えないようにするんだよ?」
「はい、ごめんなさい……っ」
アサギに教え込んでいるのは古代文字。こんな年端もいかない子供が覚えられる筈のない物だ。しかしそうと知らないアサギは懸命に覚え、今では歴史学を専攻する学生程度に理解出来るようになった。それでも間違える事は良くある。その度にこうして鞭打たれ、彼はまた必死に学習するのだ。
「ああ、血が出てしまったね」
赤い裸身を上から下へ撫でると、痛みからかアサギがビクリと跳ねた。ミミズ腫れになった箇所が滑らかだった肌に凹凸をつけており、触る度に痛みか恐怖か、小さな体はビクビク跳ねる。
「お前の肌に痕がついては大変だ」
それは本音。栄養状態がしっかりした今、子供の肌は柔らかく傷1つない。それを損なうのは正直もったいないと思う。
「ひゃぁ……っ」
背中にレロ、と舌を這わせた途端また悲鳴を上げてビクリと跳ねた。
カツキの魔力は舌に宿る。手から放出するより直接の方がより強力だ。チリチリする痛みが嫌なのか身を捩るアサギを押さえ付け
「放っておけば皮は厚くなってしまうからね。何度でも初めての痛みを味わわせてあげよう」
いつも吹き込むその言葉に子供は声もなく悲鳴を上げた。
それからさらに2年。8歳になったアサギはカツキの望む通り成長している。古代文字を完全に覚えた彼は、しかし現代の事にはとても疎い。
そうさせたのはカツキだ。光の柱を探させる為時折外へ連れ出すリツと違い、アサギの世界は部屋の中だけ。彼に余計な知識を与えないよう暇潰しに渡すのは童話ばかり。
だがそんな事をしなくともアサギはこれだけの仕打ちをされても未だ純粋なままで、ネジが緩いのかと勘繰りたくなるほどの無垢。彼はただカツキの不興を買わないよう怯えるだけだ。
(あぁ……、そうだ。それがヒトハだったね)
ヒトハは好戦的ではない。基本、与えられるものをそのまま受け入れるだけ。だから有り余る魔力があるというのにそれを使って反乱を起こそうとする事はない。それが“ヒトハ”という種族である。
昔から王家が異端なのだろう。復讐の為他人を蹴落とし、地位を手に入れた母もまた異端だったのだ。そしてその血を継ぐ、自分さえも。
その日、カツキは皇帝に呼び出されていた。
「今何と言われましたか、父上」
「弟の方も、という者が多いのだ」
「……彼はまだ精通も迎えない子供ですが?」
「普通では楽しめないだろう。それに初物を所望する声も多い」
確かにあの子供は性にも疎い。兄が嬲られる様を見ても何が起きているかわからず、ただ泣かせているだけに見えていたようだ。だからそういった経験は一切ない筈。連れてきた時の年齢を考えれば当然か。ましてあの過保護な兄がいる。そんな事態は決して許すまい。
「次の宴でより功績の高い者への褒美として差し出すのでな。支度をさせておけ」
困ったものだ、と嘆息しながら断る気はない。彼らは目的を果たすまで皇帝を信じさせるための道具と暇潰し。それ以上にはなり得ないのだから。
その5日後、宴の前日カツキは久々にアサギを連れリツの部屋を訪れていた。兄上、と呼びかけたアサギはそのままリツの腕へと飛び込み、リツもまた弟をその腕へと納めた。
「アサギ、アサギ」
存在を確かめるようにしっかり抱き合う兄弟に胸をチリ、と焦がすのは嫌悪。
(互いが大事であるほど枷になると言うのにね)
暫く兄弟の好きにさせておいて、飽きた頃アサギの首輪から伸びる鎖を引いた。
「ぁく……ッ!!」
「アサギ!」
ゲホゲホ咳き込むアサギの背を撫でるリツがカツキを見上げる。隠しきれない憎悪はあるのに、彼がそれを形にする事はない。
(愚かな事だ)
クスリと笑って、皇帝に告げられた言葉をリツへと伝えると彼の顔からは見る間に色がなくなった。
「な、ぜ……?」
「せめて10歳を過ぎるまでは、と思っていたんだけどね。子供を嬲りたい、という変態は多いみたいだよ」
カツキはそう言ってまた笑う。意味のわからないアサギはただ不安そうにリツの服を握り締めているだけだ。
「や、やめて下さい……!私がやりますから……っ!!」
「初物を所望しているそうだよ。お前では無理だろう?」
「……っ、お願いします……!私になら何でもしていい、だからアサギには……っ!!」
「……それじゃあ、リツ。明日会おう。アサギ、おいで」
「カツキ様!待って!待ってください!」
兄上ぇ……、と名残惜しそうに小さく呟いたアサギは自分の身に何が起こるのか、何故リツがああも取り乱しているのかわからない。ただ折角会えた兄と再び引き離された事が寂しいだけだ。
「何、するんですか……?どうして服脱がせるの……?」
翌日、部屋を訪れた知らない大人に簡素な服を脱がされたアサギは不安そうに辺りを見回した。
「カツキ……」
唯一分かるのがカツキだからなのか、彼は頻りにカツキを見る。
「何も怖がることはないよ、ボウヤ」
「やだ……、何するの?何でそんなとこ撫でるの?お願い、やめて……」
幼い性器をスルスル撫でられ、不安と疑問と恐怖の為か教えた敬語は抜けている。
(……今回は大目にみてやるべきだろうね)
「ねぇ、何するの?怖い……!!離して!!」
怯える子供に劣情を煽られたか男達は性急に動き始め、カツキ、カツキ、と呼ぶ彼をベッドへ倒し俯せにさせる。目の前でそそり勃つ肉棒の意味するところを理解出来ない彼はまた不安そうにカツキを仰ぎ見た。
「大丈夫、すぐ良くなるからねぇ」
「何?何するの?いや、カツキ……!」
呼び続ける彼の声が心地好い。カツキなら助けてくれるのでは、とまだ甘い期待を持つ愚かな子供に愛しさが込み上げる。
(そうだ、お前はそうやって俺の物でいればいいんだよ)
アサギは涙を溢れさせ、苦しさからか顔を真っ赤に染めていて、リツを連れた皇帝が入ってきたのはそんな時であった。
「アサギ!」
最愛の兄の声にまたビクリと跳ねた彼が懸命にもがいて振り返ろうとしているが、男の手は離れず動きも止まらない。
「やめて下さい!陛下!」
カツキの答えはわかっているとばかりに、リツは皇帝へと懇願するが皇帝もまた聞く耳など持ちはせず愉悦の表情だ。
「やー!兄上……兄上ぇ……!!」
「アサギ……っ!お願いします!もうやめて下さい!私がやりますから……ッ!!」
「助けて、兄上……、怖いよぉ……!」
リツの懇願もアサギの恐怖も全てが彼らの情欲の糧となってしまう。
「お前では……守れないよ」
狭い後孔を貫かれ、泣いて声の限りに悲鳴を上げるアサギを見ながらカツキはそう囁くと微笑んだ。それはとても愉しそうで歪んだ微笑みだった。
ごめんね、ごめんね、と啜り泣く声がする。この扉の向こうでアサギを抱き締めるリツが泣いているようだ。散々好きなように蹂躙されたアサギは最後まで怖い、怖い、と泣き叫んで気を失ってしまった。
「……」
ソッと啜り泣きが聞こえ続ける扉に手を当てる。彼らが純血じゃなければこんな目に遭う必要もなかったかと言えば、恐らくそれは間違いだ。例え牧場に連れて行かれていたとしても同じ道は辿っていただろう。あまり知られてはいないが、ヒトハという種族は稀に男でも子を宿せる者がいる。血が濃い程その確率は高くなるのだから、純血である彼らが一度でも子を宿そうものならその先はただその為だけに嬲られた筈だ。
(どちらにせよ、ろくな物ではない)
互いに求め合う兄弟に対する嫌悪と、その二人を裂き好きにできる愉悦、躾られた犬のように従順なアサギへの愛しさと。チクリ、と胸を刺す罪悪感と憐憫。
(……それでも目的を果たすまでは俺の物でいてもらうよ)
カツキにとっては母の言葉が全てだ。
幼い弟を穢され、絶望の縁にいたリツは少ししてから皇帝が望むままの人形のようになった。始めの内は何か企んでいるのでは、と疑ったけれど何年経っても何を起こすわけでもない。
段々疑いも薄れ、リツはアサギの部屋までは自由に行き来することを許されている。勿論皇帝とその客人が来ない日だけだが。
アサギもまた、体を好きにされる時に僅かな抵抗を見せるものの基本的には従順だ。そして未だに彼は純粋なまま。声を封じられるまでは窓辺にパンくずを撒いて、やってくる小鳥達に何事か話しかけている様子をよく見た。内容は子供のままごとのようで。
「今日は何してたの?」
「昨日は兄上が来てくれたんだ」
「雷神様が来るから雷が鳴ったら頭出しちゃダメだよ」
返事はないけれど、彼はその間だけは楽しそうだった。だから正直油断していたのだ。まさかリツがアサギを逃がし、あまつアサギが素直に逃げるとは思っていなかった。
13年だ。彼らを閉じ込め、蹂躙し続けて13年。年々増していくアサギの魔力は部屋にいても安心できず常に封じられている。だからここ数年彼の声は蹂躙される際の、決して甘くはない喘ぎと悲鳴しか聞いていない。
それでも時折笑顔を見せる事に安心してしまっていた。このまま側にいてくれるのではないかと、思ってしまった。
(愚かだな……)
それはそう思っていた自分へか、逃げ出した後を考えているかわからない彼へか。どちらにしても愚かな事だ。
それなのに何故裏切られた気持ちになるのか。13年という歳月側に在った存在は気付けばそれ程までに自分の心を縛っていたのか。そういえば彼らを連れてきてからあんなにも口癖になっていた“退屈”という言葉を浮かべる事すらなくなっていた。
(……そうだね、安寧だけの日々では楽しくない)
それに彼の首輪には特殊な格が嵌め込んである。居場所などすぐわかるのだ。
(それにお前は必ず兄を助けに来るのだろう?)
何よりも大きな枷。リツが残った理由はわからないけれど彼がここにいる限りアサギは決して自由になることなどないのだ。空になったアサギの部屋で外れた鎖を弄ぶ。声を失った彼はここで何を思っていたのか。
(……今更後悔するのか?)
自問して嘲笑う。
目的の為に利用すると決めた。現に彼らは最高の暇潰しになっている。後悔など無意味だ。解放してやる気など更々ない。
チチチ……、と聞こえた声に目を向けると小さく愛らしい小鳥が窓辺で囀ずっていた。カツカツと足元をつついてみたり、チョコチョコと移動してみたり首をかしげてみたりと本当に愛らしいアサギの“友達”。随分となついているのか、カツキが伸ばした手にも躊躇いなく止まる。
「……」
手離す気はない。そして恐らく好意を向けられる事もない。ならばいっそ、徹底的に憎まれてしまおうか。可愛らしく小首を傾げているアサギの“友達”をソッと手の平で包んだ。
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