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第9話

 矢田の陰茎は長さも太さも立派なもので、出し入れするだけで腹の中のいろいろな部分が刺激される。その上大きさにかまけて行為は雑な男とは違い、相手の良いポイントを的確に丁寧に責め立てる。  時々余裕を見せていた部長も、矢田のそのテクニックにだんだんと理性を溶かされていき、溶けた理性が涙となってひと粒こぼれた。 「部長、気持ちよすぎて泣いちゃったんですか」 「っぐ……ち、が、あっ……!」 「素直に言わないと抱きつぶしちゃいますよ」  矢田が笑いながら腹の奥の、開きかけた入り口をノックする。彼の本気にうろたえた部長は、半開きの口をなんとか動かして言葉を紡いだ。 「き……きもちいいよ、やたくん……」 「それはよかったです」  矢田の嬉しそうな顔に、部長の心臓が大きく高鳴る。  ときめきとは長年無縁だったそれの動きに戸惑いつつも、丁寧な行為に残り少なくなった理性がぞりぞりと削ぎ落とされていった。  不意に律動が早くなり、部長の限界が近くなる。 「あっ、それ、だめ……」 「その割に吸い付いてきてますけど?」  じゅっぽじゅっぽと音を大きく立てながら、部長の中をかき回す矢田の表情は少しも歪んでおらず「部長が満足するまでイかない」という言葉に説得力が増し、これからどうされるんだという大きな期待とわずかな恐怖が部長の心まで刺激した。  それと同時に絶頂の波が大きく押し寄せてきて、部長はシーツを掴んで首を横に小さく振る。 「やっ、やたくん、おれ、もうッ……!」 「部長……プライベートだと俺って言うんですね。可愛いなあ」  つい素が出てしまった恥ずかしさと、抗えない快楽に部長は身体を震わせる。  矢田の陰茎が奥を突いた瞬間、部長はとろとろと勢いのない射精をして身体を大きく反らせた。  全身を硬直させて、しばらくの間襲ってくる絶頂の余韻に身体を任せる。その小さな波すら妙に気持ちよく、部長は意識を飛ばしかけた。  ようやく落ち着いた部長が矢田を見ると、情欲にぎらついた瞳でこちらを見ており、目で嬲られている、と部長は感じる。  そして恐ろしいことに、矢田の陰茎は少しも萎えないまま部長の腹の中にずっぽりと収まっており、部長は驚きを隠せない表情で自身の結合部と矢田の顔を交互に見た。 「ああ……すみません、イきながら俺のをきゅうきゅう締める部長が可愛くて、俺がイくの忘れてました」 「そんなこと、ある……?」 「その、俺、遅漏気味?なんでたまにやっちゃうんですよ……というわけで」  笑顔で部長の両足を持ち上げた矢田は、絶頂を迎えたばかりで敏感な部長の中をかき混ぜる。  腹の上に出された自身の精液と一緒に、冷や汗が垂れる。 「俺がイくまでもうちょっと頑張ってください」  その無邪気な顔に、部長は頷くしかなかった。

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