12 / 68
第12話
この状態の部長は何をしても気持ちよくなるだろうという確信と、これ以上長引かせるとさすがに部長に負担がかかりすぎるだろうという若干の不安があったため、矢田は自分がイくためだけにぱんぱんと激しく腰を打ちつける。
部長は相変わらず動く度に潮を吹きつつ、口を半開きにして口の端からとろりと涎を垂らし、快楽からくる涙で顔のあらゆるところが濡れていた。
「譲さん、気持ちいい?」
「は、あ、あっ……」
「はは、聞いてないか」
駄目押しとばかりに奥を突くと、ドライでイったらしい部長の後孔がきゅ、きゅうと矢田の陰茎を締め付ける。
その刺激に射精感が込み上げた矢田が腰を振り続け、ようやく欲望を樹脂越しにぶちまけた。
「どうでした?部長」
ずるりと陰茎を抜きながら矢田が聞くと、くったりとした部長は何も答えない。
あーあ、トんじゃったかあ……と悪びれもしない様子の矢田は、スキンの端を縛ってゴミ箱に放り込むと、自分のスマートフォンを取り出した。
◆
部長が目を覚ますと、後処理がきれいに終わっており、ホテル備え付けのパジャマもきちんと前が閉められていた。
少しだるい身体を起こして視線を動かすと、矢田が適当なテレビ番組を流しながらスマートフォンを弄っていた。
「矢田くん」
「あ、起きました?」
「これ、君が……?」
「さすがにあのまま置いとけませんよ」
アフターケアまで完璧な部下に感心していると、意地悪そうな笑みを浮かべた矢田がスマートフォンを操作する。
すると部長のスマートフォンが鳴り、不思議に思った彼は画面を確認すると、そこにはとんでもないものが映し出されていた。
「え、な、何かなこれは」
「何って……部長のドスケベショットですけど」
「消し……はしないよね、君は」
「察しがよくて助かります」
いつの間にかプライベートの連絡先を交換されていたらしいメッセージアプリ上に、さまざまな液体に塗れた自分自身が映し出されている。
その状況を意外と冷静な頭で見ていた長谷は、何が目的なのかと矢田に問う。
「一回寝てみて思ったんですけど、俺たち相性いいじゃないですか」
「まあ……」
「だから、セフレになりましょうよ」
この状況にそぐわないほど朗らかな笑みを向けた部下に、若干の頭痛がする長谷は大きなため息をつく。
「……断れないんだろう、これは」
「さすが長谷部長。話が早い」
にこりと笑って手を出してきた矢田の手を握ると、強い力で握り返される。
身から出た錆、自分で蒔いた種、自業自得――様々な言葉が部長の頭に浮かんでは、ふわふわと消えていくのだった。
ともだちにシェアしよう!

