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第15話
その後もシューティングゲームや音ゲーム等、色々なゲームに付き合わされた長谷は慣れないことをした疲労から小さなため息をつく。
若者の遊びだと距離を置いていたものが存外楽しかったことも悔しいが、矢田が何故セックスするだけの相手にここまでするのかという理解がどうしてもできない。
男の恋人がいた時期もあったが、今この時間がその時過ごしていたものに近いと感じた長谷はもやもやとした気持ちを抱えていた。
「じゃ……結構遊んだし、ここ出ましょうか」
「そうだね」
出口近くのクレーンゲームの中に、どこか矢田に似ている黒い熊のぬいぐるみが目に留まる。その一瞬を見逃さなかった矢田が、踵を返してその筐体にコインを入れた。
「え、矢田くん。別にいいのに、そんな」
「まあまあ。カッコつけさせてくださいよ……あ、設定甘いから結構簡単に取れると思いますよ、これ」
「そうなんだ……」
矢田の宣言通り、数回コインを入れただけでぬいぐるみが取り出し口に落ちてきた。それを取り出した矢田が、笑いながらそれを長谷に差し出してきたものだから、長谷はぎくしゃくとしつつも受け取るしかなかった。
「矢田くん、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、行きましょうか……」
「ん?」
「ホテルですけど?そのために集まったんでしょ」
「あ、ああ……そうだな……」
耳元で囁かれ、矢田が離れていったあとに囁かれた方の耳を思わず手で覆う。
ゲームセンターでの時間が悪くなかっただけに、今の自分達の関係がセフレだということを少し忘れていた長谷は、自己嫌悪で熊のぬいぐるみをぎゅうと抱きしめる。
振り返った矢田が、そういえば、という表情をしながら話しかけてくる。
「あ、今日はゴムもローションも俺が持ってきたんで、途中で買わなくて大丈夫ですよ」
「そうか……ありがとう」
「……部長、元気ないですか?」
「まさか。君に抱かれるのを想像して興奮してるだけだよ」
「へえ。やーらしいんだ」
くつくつと笑う矢田の後ろについていく長谷は、ホテルに着くまでにこのもやもやとした感情の整理をつけられるのかどうか、不安に思いながらもホテルへ向かった。
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