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第16話
道中さまざまなことを思い返していた長谷は、そもそも誘ったのは自分のはずなのに、何故矢田くんのペースに巻き込まれているのかと気づき、なんともいえない感情に襲われた。
それを見計らったかのように矢田が長谷に話しかけてきたため、長谷はびくりとした。
「どうせ泊まらないし、今日はラブホでいいですか」
「君の好きなところでいいよ」
「わかりました」
言った後で、SMルームのような特殊な部屋に通されたらどうしようと一瞬後悔したが、矢田が選んだのは少しだけ値段が高めのラブホテルで、部屋もごく普通のところだった。
部屋に着くなり長谷が顔を寄せ、耳元で囁く。
「矢田くん、今日も満足させてくれるんだよね?」
「部長が望むならそうしますよ」
荷物を置くとき、ゲームセンターで矢田から貰った熊の顔をソファーの背もたれに向けて置く。
矢田はその直後に長谷の腰を引き寄せた。
「今日は一緒に風呂入りましょうよ」
「え……」
「駄目なら今日は解散しますけど」
つつ、と腰を手で撫でられて、長谷の体の芯がずくりと疼く。こんな風にさせておいて、置いてけぼりというのは彼のプライドが許さなかった。
長谷は余裕そうな表情を崩さぬまま、矢田の胸元に頬を寄せる。
「いや?駄目じゃないよ。その代わりエスコートはよろしく頼むね」
「仰せのままに……とりあえず準備してくるんで、部長は適当に座ってて下さい」
ベッドに座るのも少し違う気がしたので、熊のぬいぐるみの横に腰掛ける。浴室からざばざばと水音がした後で、矢田が戻ってきた。
「なんかAVでも見ますか」
「いや……僕は興味ないかな」
「ふーん……案外潔癖なんですね」
変な誤解を与えたような気がしたが、面倒なのでそういうことにしてそこから何も言わずにいると、矢田の顔が至近距離にあり驚く。
「え、な、何だい?」
「何って……キスしようと」
「別に恋人でもないし、そういうサービスはしなくてもいいよ」
「なんか言ってること前と違いません?ま、いいですけど」
適当にベッドに腰掛けた矢田は、よくわからない映画を流してぼうっと眺めている。そうこうしているうちに湯船に湯が溜まったようで、服を脱ぐように促された。
服を脱いで風呂場に入ると、シャワーの温度を調節した矢田が長谷の身体を軽く流す。
その後矢田も身体を流し、二人でも十分すぎる程の湯船に入ると矢田が浴槽横のパネルを操作し、電気を消してジャグジーのスイッチを入れた。
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