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第40話
矢田が長谷のベルトに手をかけ、音もなく抜き取る。綺麗に巻かれたそれがサイドボードに置かれたのを横目で見た長谷は、半ば無意識にスラックスの腰部分に手をかける。
「部長、駄目ですよ。俺が全部脱がすんですから」
「……」
「俺の言うこと、聞いてくれませんか?」
眉を下げて甘えるような声で囁かれ、こういう時ばかり年下の部分を見せつけてくる彼のずるさにどきりとしてしまった長谷は、小さく頷く。
それを見て矢田の唇が弧を描く。彼がスラックスの留め金を外し、ジッパーをちりちりと下ろす。
「腰、上げてくれますか」
言われるまま腰を上げるとスラックスが丁寧にずり降ろされる。長谷が腰を落とすと、ふくらはぎのあたりを生地が優しく撫でながらスラックスが足から抜き取られる。
それを丁寧に持ち上げた矢田は、スラックス用のハンガーに皺にならないようにかけると、長谷の服たちをじっと見つめていた。
「どうしたんだい」
「なんか部長、服までエロいですね」
「そ、そうかい……?」
真面目な顔で不思議なことを言う矢田を、ボクサーパンツとアンダーシャツ、そして靴下を身に着けただけの状態になった長谷が首を傾げながら見る。
振り返った矢田は長谷に歩み寄り、触れるだけのキスをするとベッドに優しく押し倒した。
「や、矢田くん……?」
「んー……もう我慢の限界です」
下着ならウチにまだあるんで、と言った矢田を見て、拒否権などないと思った長谷は腕を首の後ろに回して矢田の耳元に顔を寄せる。
「わかったよ」
「あの、明日も仕事ですし……一回だけで済ませますんで」
「そこはまあ……君に任せるよ」
「……ありがとう、ございます」
矢田はガラス細工に触れるかのような手つきで長谷の頬を撫でたあと、どこか申し訳なさの残る動きでもう一度口づける。
ちゅ、ちゅ、とリップ音を響かせながら唇をつけたり離したりしている間に矢田は器用に自分のジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩める。
「やっぱり手慣れてるねえ」
「ふは、なんですかそれ……煽ってるんですか?」
「まあね」
色々と振り絞って余裕を見せた長谷だったが、矢田にはバレていないようでわかりやすくむっとした矢田は、その苛立ちを込めるような強さでアンダーシャツ越しに長谷の乳首を弾いた。
「んっ……!」
「あんまり俺、余裕ないんで……」
そんなの見ればよくわかる。最初はそんな君を見たくてたまらなかったんだ、僕は――と長谷が自分でも処理しがたい感情に飲み込まれるのと同時に、矢田が両手を使い長谷の両胸の尖りを押しつぶした。
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