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第54話
カーテンの隙間から差し込む陽光が、大きなベッドを照らし出す。そういえば今まで矢田と体を重ねたのは締め切られた部屋や夜ばかりで、太陽の下で行為をするのは初めてだと自覚した長谷の顔に熱が集まる。
がちゃん、と矢田がドアを閉める音ではっとして音のした方を見ると、彼も上気する顔を片手で押さえていた。その手が少しだけ震えているのを見て、長谷もその緊張が胸の奥に染み込んでいくような感覚に陥った。
数分の間、沈黙が二人の間を流れていく。
部屋の入り口からベッドまでのごくわずかな距離を踏み出すのに、こんなに勇気がいることは今まであっただろうか。長谷は気持ちを落ち着けるために深く息を吐くと、不安そうな視線がこちらに向いた。
「……僕も、年甲斐もなく緊張してるみたいだ」
弱々しく長谷が微笑むと、安心した様子の矢田の表情が緩む。
「譲さん。ベッド……行きましょう」
「うん、行こうか」
合わせたわけではないが二人揃って一歩踏み出して、長谷はベッドの縁に腰かける。横に座った矢田が長谷の肩を掴む。
「あの、譲さん」
「なんだい」
「愛して、ます……大事に、しますから」
「うん、僕も愛してるよ」
長谷の言葉を聞いた矢田は、また瞳に透明な雫を浮かべる。それをこぼれ落ちないように天を仰いだ後、誓うように唇を重ねた。
緊張からか若干かさついているそれに湿り気を与えるように長谷が唇を食むと、ぴくりと反応した矢田が競うように同じ動きをしてきた。
最初は軽い口づけから、互いを貪り合うような行為に変わっていった頃には、二人の頭の芯には確かな熱が灯っていた。
キスを深めるうちに身体の熱が高まり、既にハーフパンツを押し上げている矢田の陰茎を服越しに撫でると、少しむくれながら矢田がぽそりと言葉を零す。
「あの、今俺ヤバいんで……あんま煽んないでください」
「別に激しくしてくれても構わないのに。君がしてくれることなら何でも気持ちいいし、嬉しいよ」
「もう……そういうとこですよ……譲さん……」
辛抱たまらんといった様子の矢田が、長谷の肩を押してマットレスに背中を押しつける。倒れ込んだ長谷が腕を伸ばすと、のしかかった矢田がもう一度唇とともに舌を口内にねじ込んできた。
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