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第58話
約一週間ぶりに異物を迎え入れるそこは、若干の抵抗感はあったものの意外とすんなりと指が入っていく。
「あれ、部長もしかして一人でシてました?」
「いや……仕事でそんな余裕なかったの、君も知っているだろう」
「あー……アレは確かに……余裕なかったですよね、てことは慣らしちゃったんですか、風呂場で」
やはりむくれた様子の矢田を見て、長谷はおかしそうに吹き出す。「笑い事じゃないんですけど」と不服そうな矢田の太ももを撫でながら長谷は吐息混じりにささやき声を出した。
「本当に何もしてないよ。多分君にはやく来てほしくて、身体が準備してるんだと思う」
「え、なんですかソレ……譲さん、破壊力ヤバいですって……」
「君が興奮してくれるの、たまらないな……」
からかわないで下さいよ、と口を尖らせつつもしっかりと内壁をなぞりだした指から与えられる快楽に、長谷は無意識に身体へ力が入る。
ただの前戯でここまで快楽を拾い上げてしまうのは、矢田の指に慣れきってしまったのか、それとも――
「……愛しているから、なのかな」
「へ?」
「恵介くん、僕……今、すごく幸せかもしれない」
「あは、俺もですけど。指だけでそんなとろとろになったら俺の挿れたら溶けちゃいませんか」
「うーん……君になら溶かされてもいいか、もっ……!?」
ローションを纏った薬指がいつの間にか襞を押し広げていて、圧迫感が増したことに驚いた声を出した長谷を、矢田は楽しそうに見つめる。
にちにちと音を立てながら二本の指で前立腺を押しつぶしていると、それに応えるように長谷の先端から先走りがとぷとぷと溢れた。
「譲さん、きもちーですか?」
「ぅ、んっ……」
「俺もこういう事するの、譲さんを最後にするんで」
「え……?」
「譲さんも俺を最後の男にしてください」
熱烈な告白を長谷が胸の中でじんわりと反芻して温かい気持ちになっていると、人差し指をあてがったと思いきや全ての指が引き抜かれる。
矢田が数秒考え込んだ後に腰を進め、指とは比べものにならない圧迫感と熱が長谷の中に割り入ってくる。
前戯もそこそこに陰茎を挿入してくるのが彼らしくなくて、相当に興奮しているのだろうと感じた長谷は生理的に浮かんだ涙を、目を細めて目尻へと押し出した。
息を荒くしながら矢田が問いかける。
「っう、譲さん、痛くないですか……?」
「大丈夫、とっても気持ちいいよ」
カリの部分が全て長谷の中に入ったら、その勢いのまま奥までずりゅりゅと入り込んでいく。
随分性急な感覚に長谷は目の前に星が飛ぶ。その粒が舞い散る視界の中で、陽の光に照らされたガラス細工のような矢田の汗をうっとりと眺めていた。
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