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第59話

「すみません、動いてもいいですか」  我慢の限界が近そうな矢田が絞り出すような声を出し、長谷は全てを受け入れた笑みで頷く。  確かに圧迫感とじんわりとした熱感はあるが、それよりも「恋人として」彼を受け入れることができたという事実がたまらなく幸せだった。  きっと彼も同じ気持ちだろうと考えた脳みそをかき混ぜるように、矢田が律動を開始する。  彼が腰を押し出すたび、奥底を抉られるような衝撃が走る。  最初は痛みに近かったそれも、じきにじんわりとした熱が痺れに変わっていき、甘い吐息がこぼれ出す。 「……っ、は……もっと……」  無意識に零れた声に、矢田の瞳が熱を帯びる。  唇を塞ぐように深く口づけられ、内も外も同時に支配されていく感覚に、長谷の全身が震えた。  上も下もぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、わずかに残った理性もとろとろに溶けていく。すき、もっと、きもちいい、ということばかり頭に浮かんでは消えていく長谷の様子を見て、矢田がうっとりと微笑んだ。 「譲さん……今の顔、すごくエロいのに綺麗……」 「やだ……みる、なっ……」 「いいえ。譲さんの可愛いところもエッチなところも、全部全部見たいです」  さらっととんでもないことを言ってのける矢田に驚いていると、前立腺を重点的に擦り上げられる。  喘ぎが止まらなくなった口の端から唾液がとろりと垂れ落ちて、陽光を受けて光る。  それを恍惚とした様子で眺めていた矢田はきらめく液体を舐め上げると、そのまま唇をもう一度塞いだ。  唇を貪られながら、ぐちゅりと奥を突き上げられ、理性の最後の欠片までかき消されていく。  腰が勝手に矢田の動きに合わせて揺れてしまい、自分でも止められない。 「う……あ、けいすけくん、けいすけくんっ……!」  涙が滲んだ瞳で縋るように見上げれば、矢田はたまらないというように長谷の頬を撫で、唇を何度も落とした。 「大好きです、譲さん……ほんとに……全部俺のものにしたい」  囁きと同時に奥を強く抉られ、甘い悲鳴が勝手に零れ落ちる。  僕はもう、とっくに君のものだよ――  長谷の言葉は紡がれることなく、喘ぎとなって矢田の耳へ届く。  理性も羞恥ももう残っていない。ただ彼に抱かれている幸福と、溢れる快感だけが長谷を支配していた。  ぱんぱんと腰を打ち付ける音と、粘度の高い水音が明るい寝室に消えていく。お互いの絶頂が近いことを自覚した二人は、愛を誓うようなキスをした。

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