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エピローグ⑤

 天井まで届く大きなアクリルの板から、青みがかった光が薄暗い館内に差し込んでいる。  その中を自由に動くエイなどの大きな生き物を見て、二人は目を輝かせた。 「わ、すごいですね……」 「ああ、すごいね……」  手を繋いだまま大きな水槽の中で自由に動き回る生き物をしばし眺めていたが、ここが最初のブースだと気づいた二人は顔を見合わせて小さく笑った。 「あは、この調子だと間に合わなくなっちゃいますね」 「そうだね。次、行こうか」  そのまま様々なブースを巡っていると、アーチ状の水槽にたどり着いた。頭上を泳ぐ様々な魚を長谷が眺めていると、不意にシャッター音がした。 「な、なんだい?」 「いや、今の譲さん……いい顔してたから。それに」 「うん?」 「外で見ても大丈夫な写真、持っておきたいじゃないですか」  耳元で囁かれた言葉に、長谷は耳まで赤くする。確かに、彼が持っている画像は最初に撮られたあの画像しかないが―― 「僕も、君を撮ってもいいかい」 「いいですよ」  差し込む光に照らされきらきらと輝く瞳をすうっと細め、矢田が長谷から離れる。  ちょうど人が途切れたため、その中心でポーズを決めた矢田を画角に収め、画面下部の丸い箇所をタップして写真に収める。 「どんな感じになりました?」  寄ってきた矢田に撮った画像を見せると、彼は照れくさそうに笑う。 「譲さん、写真すごく上手くないですか?」 「ん?まあ、大学でそういうサークルに入っていたからね」 「え、なにそれ初耳なんですけど」 「……しばらく撮ってなかったから」 「じゃあ、これからいっぱい撮りましょうよ。俺と、いろんな場所で」  長谷の手を取った矢田が、真剣な表情で語りかける。  ――そうか。これからは、恵介くんと色んなところに行ってもいいんだ。楽しいことを、沢山してもいいんだ。  言葉にできない感情に襲われた長谷は、矢田の手を強く握り返す。 「その時は、また僕が撮るからね」  泣きそうな笑顔で長谷が頷くと、矢田は嬉しそうに笑った。  上から差し込む青い光が、二人を優しく包み込んでいた。

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