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咲良×葵

うだる様な夏の暑さ。 制服のズボンを膝下まで捲り上げて団扇で仰ぎながら教室の窓に腰かける川下 葵(かわしも あおい)は、窓のすぐ隣の机に座る最上 咲良(もがみ さくら)に声をかけた。 「地球温暖化が…進んでいるッ、そうは思わんかね最上くん。」 掛けてもいない眼鏡を上げるふりをして咲良を見やる。 「そのうぜぇ喋り方やめろや」 うはは、と八重歯を見せながら咲良に笑いかけて、窓辺からぴょんっと降りる。 咲良に団扇の風を浴びせると嫌そうな顔をした。 「なに咲良、暑くないの?」 「ちげぇ、生ぬるい風が嫌なだけ。 団扇の先に氷でもついてたら涼しいのにな。」 いやいや、と葵は咲良に手を振る。 腕に着けたスマートウォッチを咲良に見せて胡散臭い笑顔を向けた。 「なんと驚き37度、すごいですねぇ! 一瞬で氷も溶けちゃいます!」 「……テレビショッピングのテンションやめれる?」 だぁーってさ、と葵が続けると咲良が大きくため息をついて葵の言葉を遮る。 それでも続けようとする葵の口をおさえて睨むとやっと静かになった。 「お前ずっとうるさい。そういうのはベッドの上だけでいいって。」 葵の顔がみるみる赤くなって、心なしか身体も小さくなったように見える。 赤くなった顔を冷やすように団扇であおいで、視線を咲良に戻す。 ――こいつほんと顔だけは100点だよなぁ なら性格は、と問う。出てくるのは一言、良くはない。 決して悪いとは言わない。友人としては悪いやつじゃないから。 ただ葵が告白をして、その返事は 『セフレにならなってもいいけど?』 だった。 当たり前に好きだから告白をしているのに、その申し出を断るはずがない。 そんなことで咲良が嫌になるなら、はじめから好きになってはいない。 「咲良、今日は?忙しい?」 「いや暇だけど。なに、したいの?やーらし。」 団扇で咲良を叩きたくなる気持ちを抑え込んで頷くと、咲良は満足げな顔で笑った。 *** 風呂場で準備を終えて咲良が待つ部屋へ急ぐ。 ドアを思い切りあけると咲良は電話中で静かに、の意味で人差し指を口にあてた。 ドアの前で立ったまま待っている葵に手招きする。 ベッドに腰かける咲良の足の間に座れと言わんばかりに指をさして、そこにストンと葵が座る。 相手の話に相槌を打ちながら何かを口パクで伝えてきて、葵が首をかしげると咲良が少し笑う。 「ごめんちょっとミュートする。聞いてるから話してて。」 そう言って携帯の画面を操作して、葵の髪を掴む。 ほんの少し痛みがはしって葵の顔が歪む。 「なんで分かんねぇの?舐めろって言ってんの。 お前俺の犬でいいって自分で言ったよな?」 「だ、だってお前通話中じゃん!」 は?と上から聞こえる威圧的な声に身体がこわばる。 咲良のベルトに手をかけて外そうとするのに、うまくできずにもたついていると咲良が自分で外して咲良の大きくなったものが露になった。 咲良を見上げるとちょうど通話を再開しようと携帯を耳に当てるところ。 早く舐めろと言わんばかりの咲良の目線の移し方に、咲良自身を口に含む。 自分の唾液と咲良の先走りであっという間にぬらぬらと光る咲良のものは、どうにも葵の心をざわつかせる。 基本的に誘えばOKを出す咲良が、どうしても会えない日。 他にセフレがいるとは聞いていない。いないとも言ってはいないけれど。 セフレの前に友人なのだから、恋人がいないことは知っている。 ただ、誰と会うの?と聞いても、さぁ?とはぐらかすだけで何も教えてくれない。 上目遣いで咲良を見やると目が合う。 それからしばらくしてやっと通話を終えた咲良が一言。 「全然舐めれてないけど。」 「う…ごめん。でも萎えてないじゃん?」 まぁ確かに、と呟いて葵をベッドの上へ呼ぶ。 喜んで横に座る葵を押し倒して、今度は咲良が葵のものを口へ含む。 「あっ、さ、さくら…っ、ん…、」 「なに?気持ちいいの?これも?」 一瞬だけ歯を立てられて身体がびくんと跳ねる。 頷いて返事をするとふぅん、とだけ呟いてまた続きに戻る。 達しそうになって咲良の髪を掴むと、咲良はそこでやめた。 「…なんで?なんでやめるの?」 「は?なんで?お前になんで、とかあるんだ?」 上り詰めてきたものを吐き出したくて、でも咲良の言うことを聞かないといけなくて葵の感情がぐちゃぐちゃになる。 「ない、ないよ、ないから…っ お願いいっぱい痛くして、もっとひどくして…?」 「はは、ほんとドMでウケんね」 それから葵の胸の突起を舌で転がしたあと、少し強く噛む。 「いっ、あっ…痛…っ」 自慰行為を覚えた頃は、普通の刺激で十分だったはずなのに、はじめてセックスした相手から強い刺激をうけたあとはその強い刺激がないとイケなくなった。 気持ちいいと思うのに射精までいけない、それが辛くてしんどい。 その点、咲良は言葉でも態度でも容赦なく責め立ててきてパートナーとしては優秀すぎるほど。 「噛まれて感じてんじゃねぇよ、ド変態が」 ほんの少し指で慣らしただけなのに葵は受け入れる準備ができていて、それを見た咲良が最初から奥までいれた。 「あっ、ぅ…んっ、きもちぃ…っ」 「お前ほんとやば、痛くねぇの?」 ふるふると首を横に振って、上にかぶさる咲良を抱きしめる。 ――もっともっと、痛いくらいの奥までほしい。 二人の約束でキスはしないと決めた。 だからどれだけ顔を近付けてもキスはしない。 咲良が葵の片足をあげて更に奥までいれて、葵の乳首をぎゅっとつまむと抑えられない声が葵の口から漏れる。 「やっ、あぁ、さっ、咲良…っ、俺気持ちよくて、頭おかしくなっちゃうよぉ…っ  イッちゃう、もうイッてもいい…っ?」 「だめに決まってんじゃん、なんでそんなすぐにイケると思ってんの?」 そう言って途中で動くのも胸への刺激も止める。 ハッハッと本当に犬みたいな短い息を漏らして、腰が勝手に動く。その腰を掴んで咲良が笑う。 「勝手に動くなよ、誰が動いていいっつったの?」 「は、ぁ…ごめ、ごめんなさ…っ」 葵の肩に手をまわして起き上がらせると葵が咲良の上へ乗る。 ゆっくり動くと、その刺激じゃ足りないと言わんばかりに葵が動こうとする。 「あーおーい、なぁ俺動いていいよって言ったか?」 「だってこれじゃ…っ」 「だって?だってって何?誰に向かってそんな口きいてんの?」 きゅ、と入り口が締まる。 下から咲良が突きあげてくるたびに声が漏れて止まらなくなる。 自分で胸をいじりながらあと少しの刺激をもとめて咲良に抱きつくと、咲良が葵の首に思い切り噛みつく。 「はっ、あぁ…っ、だめ、だめぇ、イッ…く…っ」 葵は自分と咲良の腹へ、咲良は葵の中へ熱を放った。 二人で抱き合いながら肩で息をして、ベッドへ倒れこむ。 「あー…つっかれた、お疲れ変態ちゃん」 そう言って咲良が葵の頬を撫でる。 「今日もありがと、気持ちよかった」 頬を撫でる手に自分の手を重ねて少しだけ握った。

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