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第3話 組長の過去 ~巣をつくる闇~
ニュースでオメガの売買。トリップして壊れた状態で、裸のまま捨てられる事件が流れる
胸糞が悪いとテレビを切る。
あいつみたいなやつからオメガを守るため、俺はそれから、オメガ専用の高級クラブを作ることにした 安心安全に働けて、蔑まれるオメガにも、世界に堂々といられるように……
夜、バーで一人で飲んでいるときにふっと会話の中で、オメガのトリップの話題が出た
バーテンダーも最近客が少なくなって困っているという
デートの待ち合わせによく使われていたが、それも少なくなって不景気だと愚痴る
「おい、みかじめ料はしっかりと貰うぞ」と、くぎを刺しながら、ウィスキーを口に入れると
胸糞悪い話の苦みなのか、それともウィスキーの味か……体にしみこむ
昨日の話もあって、クラブに、みかじめ料と様子を見に行くことを踏まえていくと、
キャストが最近減っている。
アフターをしてから、帰ってこないと……
それを解決するために、俺と蓮は客を装って、監視することにした
決まって水曜日にみないなくなる これで、三人目だ
みな、勤務態度もよく、不満がありそうだったかと聞くと、そんなことはないと顔を横に振るボーイに
何かきな臭さを感じていると……
聞きなれた声が聞こえてくる
「今日は誰にする……楽しみだな」という声、俺の赤ん坊を殺した男
かつて何も知らないうぶな少年が愛した男の声だった
フルフルと小刻みに増えだす俺に、蓮は心配そうに「組長……組長大丈夫ですか?」と小声で聞く
音楽が流れているから聞こえないだろう
俺たちは、VIPの鏡張りの部屋にいる キャストがすべて見える
ここで、キャストを選んでもらう
そんな部屋が、いつもより異質に感じるのは俺の心臓が鳴りやまないからだ
「大丈夫……大丈夫前の、俺とは違う」自分に言い聞かせるようにつぶやく
「本当に……どうしたんですか」と肩をつかもうとしたとき、あいつらは一時間ほど楽しんだようだ
だいぶ時間がたっていたみたいだ
金払いのいいところは昔も今変わらないようだ 虫図が走る
「おい、行くぞ」っと、動き出す、憎い男どもの気づかれないように、後ろをついていく
しばらくすると高級ホテルの入り口で、明らかに喜んだオメガがいる
俺はホッとする ここは俺の傘下がやっているホテルだから、融通が利くと思い安心する
入室したのを確認するとフロントに聞く
「あいつらはいつから、滞在している?」ときくと
約一か月前からだ。お忍びのために、セキュリティがしっかりしているところにあいつは目を付けたのだろう
偽名で借りやがって
それも、俺の捨てた名前……神崎冬弥で登録してるなんて力いっぱいに握ると、手から血が出る
「風見……さん 組長」とすぐ白いハンカチで止血をする。血が付くこともなんとも思わないかのように止血する蓮がハンカチを結ぶ。それはお守りかのようにやさしい色を放つ
(大丈夫……俺は、昔の俺じゃない。それに、頼りになる若頭だっているんだから)
「いい、行こう。あいつは死んでも変わらない男だ」オメガを支配して、落とし、金持ちどもに売りつける 俺の時からずっとオメガを虐げる悪癖は変わってない ……
「はい」とだけいいおとなしくついてくる蓮を背に感じながら扉を開くーーー
「おい誰だ!!」という部屋の中では麻薬特有の、においが充満していた三人のオメガと五人のアルファが目に入る
「お客様当店ではそのようなことは許可されていませんが、私の島で何をされてるんです?」
と呼吸を浅く整えながら言う
奥から、あいつが出てきた
「固いこと言わないでよ……あなた達もおいしい思いしてるはずだけど、俺の親父のおかげで……」
「その年でも、パパ便りですか?恥ずかしくないんですか。私の大切なキャストを返してもらおう」と
トリップしているキャストを早く回収しようと、手を出すと
「おい、おまえ、どこかで……なんだ冬弥じゃん。俺にまだ未練あるの?それだったら、もっと遊んであければよかった……チっ、こんなことなら、しっかり首を噛んでから……捨てれればよかった。面倒だな」と悪びれもなく言う男に
あの日の事がフラッシュバックする
「……ごめんなさい、謝るから、おねがい、お願いやめて」
歯ががたがたとなり出す
「組長!」というと
「オメガの癖に、組長やっているんだ……擬態するのだけはうまいもんな~ あと子供どんなったんだっけ、そうだ俺がなぐって蹴って降ろさせたんだ。ごめんな、冬弥わからなくなるくらい壊してあげなくてもう、もう壊れかけの、おもちゃには興味ないんだよ」と嘲笑う男にまっすぐ拳が下せれる
「あが、あがが」と歯と鼻が折れる音がした
「風見さんにそんなひどいことを……」
「本名もしらにゃいのに、偉そうにするな」と発した男をまた殴る
原形がとどめられないほど、殴っていいるあいだにフロントスタッフが、本部に連絡したようだ
顔見知りの舎弟に止められて初めて、無我夢中で殴っていたことに気づいた
「ごめんな……さいごめん」と言っている組長に触ろうとする舎弟に
「触るな!さわるな組長は、俺が何とかする ほかのスタッフをよろしく頼む」というと納得したように
頷く
使われてない毛布に包むと、お姫様抱っこをして玄関に向かう
「俺がいいというまでは、組長の事は俺に任せってください」と言い去る
その姿は、ギラギラと瞳孔が開いた目だった
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