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第二章 恋の呪文?
夜明けとともに、王宮から脱出する。
それが、アルネと母、そして彼らに付き従う側近たちの計画だった。
アルネの兄である仮王を、見捨てるわけでは、ない。
王の血筋を、絶やさないためだ。
もし仮王が戦死しても、アルネが生きていれば巻き返せる。
そう、側近たちが判断したのだ。
そしてその案は、アルネの兄自身も充分承知していた。
長兄だけ戦地に残して亡命することを、彼の母は嫌がった。
しかし、仮王は優しく彼女に願った。
『母上には近隣の国に働き掛けて、我らの味方になってもらうよう、説得して欲しいのです』
王政に反対する軍部が、クーデターを起こしたのだ。
同じように王を掲げる国々は、手を貸してくれるに違いない、と仮王は考えた。
もし、テミスアーリンが陥落すれば、連鎖反応で他国でもクーデターが起きる可能性は充分ある。
周辺諸国は、息を詰めて戦況の行方を見ているだろう。
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