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夜明け前。
東の空が白む、直前。
エディンは最後の檄を、兵士たちに飛ばした。
「まもなく、明けの明星が昇る。それを合図に、我々は攻撃を開始する」
竜将の闘いに、敗走は無い。
皆、勝利を確信して耳を傾けていた。
だがしかし。
「王都・テミスアーリンへ突入した際は、いっさいの略奪行為を禁ずる。飲みかけの紅茶一杯すら、口にするな」
この言葉には皆、耳を疑った。
辛い遠征も、命を懸けた戦いも、略奪の旨味あってこそ。
兵士の半数は、職業軍人ではなく、徴兵された農業や漁業を営む人間だ。
しかも、さほど裕福でない者が多い。
略奪で手にした財は、帰国後の暮らしを潤す糧となるのだ。
不満そうな目の部下たちだが、その口元は緩んでいる。
バレなければいい、と思っているのだ。
そんな彼らだったが、次に続くエディンの言葉に震え上がった。
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