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「禁を破れば、全体責任。罪人の所属する一個小隊全員の首を、私の手によって刎ねる」
眉ひとつ動かさずに言い放つ、竜将だ。
竜だけに、逆鱗に触れれば命はない。
それでもアーリンは、兵たちをただ怖がらせるだけではなかった。
飴と鞭を使い分けるように、甘いご褒美も、ちゃんと用意していた。
「勝利の暁には、日当の他に特別ボーナスを与えよう」
軍人には、金銭を。
農夫には、土地を。
漁夫には船を、それぞれ約束した。
「金があれば、軍人を辞めて商売を始められる!」
「借りた土地でなく、自分の土地を耕せるのか!?」
「俺が、船長に!? これは頑張らなきゃな!」
色めき立つ部下たちに、エディンはこう締めくくった。
「褒美が欲しければ、死ぬな。負傷しても、必ず本国へ連れて帰る。だから、絶対に生きろ」
鬨の声が上がり、ついに明けの明星が輝く時が来た。
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