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 夜明けを待っていたクーデター軍は、突然の群声と蹄の音に驚いた。  王都・テミスアーリンへ攻め込む前に、エディン率いるネイトステフ軍から挟撃を受けたのだ。 「慌てるな! 我らには、奥の手がある。火薬を準備せよ!」  クーデター軍の将が命じると、後方に控えていた投石機が動かされた。  元々は、王都を護る国軍に放つために、用意したものだ。  異国から導入した新兵器で、奴らの戦力だけでなく、心をも挫く。 「それが、まさか。竜将相手に使うことになるとは!」  忌々しい、と吐き捨てた将軍だったが、朝日に照らされる投石器と火薬の入った陶器壺に笑みを浮かべた。 「見ておれ。奴など、こいつで吹き飛ばし、焼き尽くしてくれる」  石の代わりに、導火線に火を点けた火薬壺を放つのだ。  騎兵も歩兵も、爆発と炎であっという間に殲滅できる。  自信満々の将軍は、すでにエディンの首を獲った気でいた。  ところがそこへ、伝令の悲鳴が聞こえてきた。  クーデター軍に、とんでもない凶報が舞い込んできた。   

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