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エディンを乗せた駿馬は、戦場を縦横無尽に駆け抜けた。
彼の行く手を阻むことは、誰にもできない。
その首を狙って斬りかかる者がいても、薙ぎ払われる。
まるで槍かと見まごうほどの、鋭利な長剣。
それが、エディン愛用の武器だった。
一振りで七人の首を獲った、と言われる、伝説の剣だ。
「道を開けろ! さもなくば、斬る!」
凛とした声だが、その表情は無だ。
敵を脅すでもなく、味方を鼓舞するのでもなく。
ただ淡々と、敵を斃して駆け抜ける。
竜将と讃えられるエディンだったが、その別名は『死刑執行人』だ。
冷徹に、眉ひとつ動かすことなく、人の命を奪う。
華やかな賞賛の陰に、そんな深い闇を抱えた男だった。
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