17 / 372
2
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
「……まるで、地上に舞い降りた天使だ」
肖像画のタイトルは、人名になっていた。
おそらく、描かれている少年の名前だろう。
「アルネ・エドゥアルド・クラル……」
その名を口にし、エディンは自分の声で我に返った。
つい、肖像画に目を奪われてしまったが、おかげで違和感に気付くことができた。
額が、わずかだが傾いているのだ。
地方の男爵邸ならともかく、国王の住まう宮殿に、そんな落ち度があるとは思えない。
エディンは静かに額に手を掛け、大切に動かした。
すると、重いはずの額は意外に軽く、しかも隠れていた壁には布が吊るしてある。
「これは、もしや」
布を剥ぎ取ったエディンは、うなずいた。
「大当たりだ」
肖像画に隠れていた壁には、大きな空洞が造ってあった。
ここが、秘密の抜け穴だったのだ。
ともだちにシェアしよう!

