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 瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。 「……まるで、地上に舞い降りた天使だ」  肖像画のタイトルは、人名になっていた。  おそらく、描かれている少年の名前だろう。 「アルネ・エドゥアルド・クラル……」  その名を口にし、エディンは自分の声で我に返った。  つい、肖像画に目を奪われてしまったが、おかげで違和感に気付くことができた。  額が、わずかだが傾いているのだ。  地方の男爵邸ならともかく、国王の住まう宮殿に、そんな落ち度があるとは思えない。  エディンは静かに額に手を掛け、大切に動かした。  すると、重いはずの額は意外に軽く、しかも隠れていた壁には布が吊るしてある。 「これは、もしや」  布を剥ぎ取ったエディンは、うなずいた。 「大当たりだ」  肖像画に隠れていた壁には、大きな空洞が造ってあった。  ここが、秘密の抜け穴だったのだ。

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