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 何もしゃべらず、にやけるだけの将軍に、アルネは焦れた。  そして、そんな彼をひどく不気味に感じていた。 (もしかすると、僕たちを皆殺しに……!?)  それだけは、避けたい。  アルネは、強く思った。  優しい母や、忠誠心厚い側近たちを、死なせたくない。  根負けしたアルネは、とうとう自分から申し出た。 「私は、どうなってもかまわない! その代わり、母上たちへは指一本触れるな!」  彼の訴えに、将軍は待ってましたとばかりに、手を打ち鳴らした。 「良い心意気だな。さすがは、王子だ」  その言葉に、嘘偽りは無いな?  急に凄んだ将軍に、アルネは気圧されたが、彼は誇り高い少年だった。 「王族に、二言は無い。母上たちの命の保証を約束せよ!」 「では、試させていただこうか」  将軍は前へ進むと、アルネに近づいた。 「テミスアーリンの真珠と謳われる、アルネ・エドゥアルド・クラル……」  彼の容姿に魅せられたのは、エディンだけではなかったのだ。 「殿下の純潔を、今ここでいただく」  あまりにも醜悪な彼の言葉に、アルネの顔から血の気が引いた。

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