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「卑劣な! 恥を知りなさい!」  真っ先に叫んだのは、アルネの母だった。  身を挺して我が子の盾になろうと動きかけたが、次の瞬間にはその場にうずくまってしまった。  彼女は、ここまで辿り着く間に、足を傷めていたのだ。 「母上!」  母の元へと駆け寄りたいアルネだったが、その薄い肩を強く掴まれた。 「母親の命を救いたければ、言うことを聞くんだな」 「……解った。好きにするがいい!」  半ば自棄のアルネは、開き直って将軍に向き合った。 「私の純潔など、くれてやる。早く済ませて、母上の手当てをして欲しい」  そして、自らコートを脱ぎ、絹のブラウスのボタンを外し始めた。 「そうそう。素直な良い子だ」  将軍は、身に纏う全てを脱ぎ捨てたアルネの体を軽々と抱え、簡素なベッドへ横たえた。 「アルネ!」 「アルネ殿下……!」  母と側近は、すでに将軍の配下たちに剣を突きつけられている。  アルネを助けたくても、助けられない。  おぞましい、地獄の時間がすぐそこまで近づいていた。

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