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第五章 決着
アルネの純潔を、今まさに奪おうと近づくクーデター首謀者。
母や側近たちの悲痛な声すら楽しんで、将軍は彼に顔を近づけた。
生臭い息が、頬に掛かる。
背に怖気が走るアルネだったが、ふとあの名前が心に浮かんだ。
(フェリックス・エディン・ラヴィゲール)
兄から聞いた、名高い竜将。
勇猛果敢な、一騎当千の猛者。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール……」
アルネは、無意識にその名を唱えていた。
不思議と、勇気が湧いてくる。
まるで呪文みたいだと、昨夜は考えたのだ。
だからと言って、魔法のように事態が好転するはずもない。
しかし、間近でアルネの呟きを聞いた将軍は、動きを止めた。
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