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 声ひとつ立てず、将軍はアルネの上へとくずおれた。  ベッドの白いシーツに、たちまち大量の赤い血が広がる。  重い体を押しのけて、ようやく身を起こしたアルネは、ギョッとした。  将軍の背に、鋭い長剣が深々と突き立てられていたのだ。  そして、見知らぬ背の高い武人が、いつの間にか傍に居る。 「間一髪、でしたな」  低い、硬質な声。  だがその中には、安堵の優しさが込められていた。 「あ、あなたは……」 「私は、フェリックス・エディン・ラヴィゲール。ネイトステフ王国の第三王子です」 「竜将殿下……」 「申し訳ない。痴れ者の血を、お見せした」  音も無く忍び寄り、一撃で軍部のトップを仕留めた男を前に、敵兵たちはすぐに抵抗をやめた。  エディン配下の兵たちも到着し、てきぱきと後処理を始める。  緊迫した空気が、少しずつほぐれていった。

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