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 ざわめく隠し部屋の中、ベッドにしゃがみ込んだアルネに、そっとマントが掛けられた。  燃えにくい、そして矢を通しにくい、特別な布と織のマントだ。  それは重く、鉄と血と、火薬の臭いが染み付いていた。  しかし今のアルネには、それが上質のローブのように感じられた。  元は純白だったであろう、エディンのマント。 (テミスアーリンを救うために、この僕を救うために、血の朱に染まっていったんだ)  ぬくもりというにはあまりにも熱い、戦士のマントだった。 「このような傷だらけのマントで、失礼する。だが、そのお姿では風邪をひきます」 「感謝します。私の名は……」 「アルネ・エドゥアルド・クラル殿下、ですね?」 「なぜ、私の名を?」 「肖像画を拝見いたしました」  そして、心奪われました、とは言わないエディンだ。  だが、こう思った。 (こんなボロ布を纏っても、美しいとは……参ったな)  アルネが何か言いかけたが、そこへ側近の肩を借りて母がやって来た。

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