24 / 372
4
ざわめく隠し部屋の中、ベッドにしゃがみ込んだアルネに、そっとマントが掛けられた。
燃えにくい、そして矢を通しにくい、特別な布と織のマントだ。
それは重く、鉄と血と、火薬の臭いが染み付いていた。
しかし今のアルネには、それが上質のローブのように感じられた。
元は純白だったであろう、エディンのマント。
(テミスアーリンを救うために、この僕を救うために、血の朱に染まっていったんだ)
ぬくもりというにはあまりにも熱い、戦士のマントだった。
「このような傷だらけのマントで、失礼する。だが、そのお姿では風邪をひきます」
「感謝します。私の名は……」
「アルネ・エドゥアルド・クラル殿下、ですね?」
「なぜ、私の名を?」
「肖像画を拝見いたしました」
そして、心奪われました、とは言わないエディンだ。
だが、こう思った。
(こんなボロ布を纏っても、美しいとは……参ったな)
アルネが何か言いかけたが、そこへ側近の肩を借りて母がやって来た。
ともだちにシェアしよう!

