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 アルネの兄である仮王は、思いのほか傷が重く、別室で手当てを受けている。  母の痛めた足は、骨が折れていることが解り、こちらも治療中だ。  こういったわけで、自然とアルネは、エディンと共に過ごすようになっていた。  残党狩りはしているが、まだ王族を狙う暗殺者が潜んでいるかもしれない。  エディンもそういった考えから、できるだけ彼の傍にいるようにしていた。 「こんな質素な食事で、申し訳ありません。我が国の為に、命がけで戦ってくれたのに」 「いや、とても美味しい」  二人の会話は、まだこのように固いものだ。  それでも、温かな空気は胸に染み入っていた。  何よりアルネが嬉しかったのは、エディンの口調がカジュアルになったことだ。  距離が縮んだような、親密さが増したような。  そんな雰囲気を、感じ取っていた。  だが食事を終えたエディンは、妙に改まってアルネに切り出した。 「殿下に、お願いがあるのだが」 「私で良ければ、何なりと」  アルネは、エディンを紳士として信頼していたので、すぐに首を縦に振った。

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