31 / 372
第七章 アルネの覚悟
さらりと時は過ぎ、公開処刑の日となった。
目覚めたエディンは、まずカーテンと窓を開け、陽の光と空気の感じを確かめた。
「これは、雨になりそうだな」
雲は鈍く低く、日光は薄い。
高い湿度は、正午過ぎには雨を呼びそうだった。
「いっそ、本降りになってくれ。そうすると、血の始末が楽だ」
流れた血は雨水とともに流れ、この国の大地に染み込むことだろう。
窓を閉め、エディンは身支度を整えた。
愛用の長剣を手にすると、独り言が漏れた。
「お前には、また苦労を掛けるな」
10人、20人、30人……それ以上の首を、今日この剣で刎ねる。
彼らの素性を記した報告書には、ちゃんと目を通したエディンだ。
代々軍人の家系から輩出された、将官。
小隊長になったばかりの、青年。
親友に誘われてクーデター軍に加わった、18歳の新兵。
軍幹部から、略奪に及んだ歩兵まで、罪状はさまざまだ。
共通点があるとすれば、それはひとつだけ。
「一人ひとりの背後には、必ず数名の家族がいる、か……」
その家族の恨みを、一身に抱える覚悟の、竜将だった。
ともだちにシェアしよう!

