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第七章 アルネの覚悟

 さらりと時は過ぎ、公開処刑の日となった。  目覚めたエディンは、まずカーテンと窓を開け、陽の光と空気の感じを確かめた。 「これは、雨になりそうだな」  雲は鈍く低く、日光は薄い。  高い湿度は、正午過ぎには雨を呼びそうだった。 「いっそ、本降りになってくれ。そうすると、血の始末が楽だ」  流れた血は雨水とともに流れ、この国の大地に染み込むことだろう。  窓を閉め、エディンは身支度を整えた。  愛用の長剣を手にすると、独り言が漏れた。 「お前には、また苦労を掛けるな」  10人、20人、30人……それ以上の首を、今日この剣で刎ねる。  彼らの素性を記した報告書には、ちゃんと目を通したエディンだ。  代々軍人の家系から輩出された、将官。  小隊長になったばかりの、青年。  親友に誘われてクーデター軍に加わった、18歳の新兵。  軍幹部から、略奪に及んだ歩兵まで、罪状はさまざまだ。  共通点があるとすれば、それはひとつだけ。 「一人ひとりの背後には、必ず数名の家族がいる、か……」  その家族の恨みを、一身に抱える覚悟の、竜将だった。

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