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セレモニー用に仕立てられた、王族が纏う軍服は濃紫。
白地に、銀と淡い緑の刺繍が施されたマントは、喪を表している。
戦死した国王への礼、そして、これから死にゆく者たちへの手向けだ。
それらを身に着けたアルネの表情は、ひどく固い。
しかし彼は、青ざめてはいなかった。
(さすがは、テミスアーリンの王子。肝が据わっている)
エディンは、アルネをそう見ていた。
(だが、こんなに軍服の似合わない人間も珍しいな)
妙なところに、感心もしていた。
一方エディンは、黒装束を身に着けていた。
黒い軍服に、黒いマント。
つばの広いエナンを目深に被ったその姿は、まさに死刑執行の死神さながらだ。
命を刈り取る大鎌の代わりに、手にしているのは、愛用の長剣。
ただ、いつもと違いグリップに銀の鈴が二つ下げてあった。
首を刎ねるたびに、この鈴が鳴るのだ。
せめて死者の魂が、この音に乗って迷わず冥府へ行けるように。
そんな祈りを込めた、ネイトステフ王国に伝わるまじないだった。
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