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 アルネはエディンの広い背中を、高いところから見下ろしている。  その背は、いつものように真っ直ぐだった。 「……いや、そうじゃない」  彼は、気付いた。  いつも真っ直ぐなエディンの背中が、今日この時は少しだけ丸く見える。  肩を、落としているのだ。 「きっと竜将殿下も、この公開処刑には気が進まないんだ」  独り言をつぶやくアルネを、警護の近衛兵は心配した。 「殿下。これより、凄惨な処刑が長く続きます。御気分が優れないようでしたら、お早めにご退去を」 「違うんだ。具合が悪いわけじゃない」  アルネは唇を引き締めると、椅子から立ち上がった。  いつものエディンのように、背を真っ直ぐに伸ばして。  そして真っ直ぐなまなざしで、前を見た。  王族の一人として、未来の歴史を変える覚悟だった。  

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