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第八章 地上に降りた天使
法務大臣の執行令が終わり、エディンが剣を抜こうとした、その時だった。
アルネが立ち上がり、朗々とした声で叫んだのだ。
「処刑は中止せよ!」
ざわめく人々の声で、広い処刑場の端までは、叫びは届かなかった。
しかし、配置されている軍人たちの口から口へと、アルネの命令は伝わっていった。
「中止?」
「処刑を中止せよ、とアルネ殿下が?」
エディンの冴えた耳は、アルネの肉声をちゃんと捉えていた。
しかし、その頭の中に浮かんだのは、他の軍人たちと同じだった。
(なぜ、中止する? 公開処刑は、反乱分子の心を折り、王族の力を誇示する最善策のはずだ)
彼の疑問には、アルネ自らが大声で、軍人に、民衆に、そして戦犯たちに述べ始めた。
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