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「報奨は、すでに仮王陛下からお約束をいただいているが?」 「それは、国同士の決まり事。私は、いえ、僕は。あなた自身に、あなただけに、ごほうびをあげたいんです」  アルネはそう言うと、椅子に掛けたままのエディンに近づいた。  そして彼を、静かにその両腕で抱きしめた。 「お疲れ様でした。よく、がんばりましたね。ありがとう」  エディンの大きな体を抱き、その髪を撫でた。  まるで幼子を褒めるように、ただ無垢な愛を注いだ。 (子ども扱いをして、竜王殿下はお怒りになるかもしれない)  だがアルネは、そうせざるを得なかった。  深い孤独を抱えたこの男を癒すには、こうするしか方法を知らなかった。  自分が、かつて母親から受けた愛情をなぞったのだ。  アルネの心配をよそに、エディンは動かなかった。  ただ、そのぬくもりに身をゆだねていた。  そして、そっとつぶやいた。 「アルネ殿下」 「何でしょうか」 「ありがとう……全て、報われた」  温かな空気が二人を包み、静かな時間が流れていった。

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