52 / 372

2

「なぜ、還りたくないか、と言えば、だな」  エディンは、部屋の真ん中に立って、自問自答していた。 「つまり、アルネ殿下のお傍に、もう少し居たいのだ」  そこでまた、考えるエディンだ。 「なぜ、殿下のお傍に居たいのか、と言えば、だな」  答えは、胸の中からすぐに飛び出した。 「彼に、もっと褒めて欲しいのだ。私は……!」  あとはもう、真っ赤な顔を片手で塞いでしまった。  口に出すのは、恥ずかしい。  しかし、素直な気持ちが、抑えられない。 (もっと、褒めて欲しい。もっと、抱きしめて欲しい。もっと、撫でて欲しい!)  大陸随一の猛将・フェリックス・エディン・ラヴィゲールともあろう者が。 「少年に擦り寄って、甘えたい、などと!」  自分で自分に呆れてしまう。  だが一方で、そんな気持ちになる自分も、解る。 「生まれて初めて、褒めてもらったのだ。私は……」  エディンは脱力し、その場にしゃがみ込んでしまった。

ともだちにシェアしよう!