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「なぜ、還りたくないか、と言えば、だな」
エディンは、部屋の真ん中に立って、自問自答していた。
「つまり、アルネ殿下のお傍に、もう少し居たいのだ」
そこでまた、考えるエディンだ。
「なぜ、殿下のお傍に居たいのか、と言えば、だな」
答えは、胸の中からすぐに飛び出した。
「彼に、もっと褒めて欲しいのだ。私は……!」
あとはもう、真っ赤な顔を片手で塞いでしまった。
口に出すのは、恥ずかしい。
しかし、素直な気持ちが、抑えられない。
(もっと、褒めて欲しい。もっと、抱きしめて欲しい。もっと、撫でて欲しい!)
大陸随一の猛将・フェリックス・エディン・ラヴィゲールともあろう者が。
「少年に擦り寄って、甘えたい、などと!」
自分で自分に呆れてしまう。
だが一方で、そんな気持ちになる自分も、解る。
「生まれて初めて、褒めてもらったのだ。私は……」
エディンは脱力し、その場にしゃがみ込んでしまった。
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