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「では、参りましょうか。エディン様」 「ご一緒しよう。アルネ」  結局、二人の呼称はこういう感じに落ち着いた。  竜将閣下の方が年上なので、アルネを呼び捨てても良いのでは?  そう、彼の母が判断したのだ。 「フェリックス殿下が、アルネとこのように親しくしてくださるなんて」  感謝します、とアルネの母親はエディンの滞在を喜んだ。  まだ足が痛む母を案じて、アルネは早めに見舞いを切り上げた。  回廊を二人で歩きながらも、彼は不安を呟いた。 「母上の足が、早く治れば良いのですが」 「せめて、痛みが退けば良いな」 「戦乱で、薬も不足しているんです」 『私はいいから、薬は臣下や市井の人々に分け与えなさい』  そう言って、自分はハーブなどで痛みを紛らわせている、母だ。 (さすがは、アルネの母上だ。慈愛の心が、桁違いだ)  しかし、このまま感心しておくわけにはいかない。  エディンは、考えを巡らせ始めていた。

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